感情の明確化とは、傾聴技法の一つであり、
相手が感じているけれども、まだ言葉にすることが出来ない感情に対して、
聞き手側がフィードバックをしていき、感情を明確にしていく技術です。
少し具体例を挙げてご説明していきましょう。
話を聞いているとこんなワンシーンに出会ったことはありませんか?
「何だかこう…胸のあたりがこう…。なんて言ったらいいかな…」
というように相手が気持ちを感じているけれど、上手く表現できないシーンです。
このようにまだ言葉には出来ないけれども感じている気持ちのことを未分化な感情と呼びます。
感情として例えばイライラするとか悲しいとか、明確にコレ!と言葉にはできないけれど感じている感情の事です。
日常の場面でもこういった場面はありますし、悩み相談の場面でもよくあります。
こういう時は、相手が自分の内面の気持ちを丁寧に感じている状態であり、丁寧に自分の内面と向き合っている時です。
こういった時に、聞き手に何が出来るのでしょう?
その答えの一つが、この「明確化」です。
明確化とは、先にご説明したような場面で、聞き手側が例えばこんなような言葉がけをすることです。
「胸のあたりがこうぽっかりと空いたような気がする?」といったように。
この言葉がけは、相手の感情を汲み取り、そのまだ言葉にできない未分化な感情を明確にするお手伝い意をする為、明確化と呼ばれているのです。
こういった言葉がけをすると、きっと相手はこう答えてくれ、こんな流れになることが想定されます。
「そうそう、そうなんですよ。あぁ、そっかぁ…。」
「そっかぁ…というと?」
「いや、やっぱりこう振られたから、自分の一部がなくなったようで、虚しく寂しいんだなって思って。」
というように。
このように相手の未分化な感情に対して、聞き手側が明確になる言葉がけをすることで、相手が自分の感情に気づいたり、自分の気持を吟味するプロセスが出てくるのです。
今日はこの「感情の明確化」についてご説明していきますね。
感情の明確化とは?
冒頭で例を示したように、
感情の明確化とは、
相手がまだ言語化できていない気持ちに対して、
こちらが先に働きかけることで、
言語化でていない気持ちを明らかにするような働きかけ
のことを指します。
彫刻家が一本の木で、彫刻をする時と似ています。
それは外側の余計な部分を削っていって、
より自分が表現したい形がはっきりしていく。
そんなプロセスだからです。
それを言葉で行うのが明確化なのです。
相手の話を丁寧に受け止めた上で例えば、
・「うまく関われないというよりは、関わり方が分からなくて戸惑っているようなそんな感じがします。」
・「孤独?ん~孤独というかなんて言うかな~…。」
→「なんだか周りに人は確かにいるけれど、大切な心の内を本当の意味でわかり合える人がいない寂しさのように見えます。」
・「確かにあいつの気持ちはわかるんだけれど…。だけどなんていうかな~こう…。」
→「頭では理解しているけれど、心が追いついてこないような…。」
といったように、相手が感じてはいるけれどうまく言葉にできていない気持ちに対して、フィードバックをしていくのです。
より明確化に相手が言いたい気持ちが浮き彫りになるように。
すると冒頭のようなことが起きてくるんですが、実際にどんなことが起きていたのかもうちょっと詳しく見ていきましょう。
感情の明確化の効果
さて、冒頭では、「胸のあたりがこう…」という気持ちに対して、
「ぽっかりと穴が空いたような?」
という感情の明確化をしています。
それを相手が受け取り、
「そうそう、そうなんです。あぁ、そっかぁ…。」
といっています。
この時に何が起きたんでしょう?
それは、相手が自分の気持ちに気づいた瞬間であり、
自分の気持ちをその言葉(フィードバックされた言葉)と、
今感じているその気持ちを照らし合わせて感じ、
言葉と今の気持ち(体の感覚)が一致し、
(そうか、ぽっかり穴が空いた感じ…。確かにそうだな。
あぁ、そっかやっぱり俺は振られて虚しかったのか、
そしてこの感じは寂しいんだなぁ…)
というようなことが起きていたのです。
聞き手から働きかけられることで、自分の気持ちが明確になる。
すると、何となく漠然とあった気持ちに気づき、それが形作られてはっきりしてくるのです。
はっきりすることで、自らの気持ちに気づき、それまで意識していなかった自分に気づいたり、自分の気持が整理されるのです。
そんなプロセスが感情の明確化では起きてくるのです。
感情の明確の際に気をつけること。
ただ、これはちょっと難易度が高いため、
一歩間違えると、ただの推測や決めつけになったりして、
気持ちが明らかになるどころか、
その気持ちに蓋をしてしまうこともありえます。
過度な推測や決めつけは、人を傷つけますから、
気をつけて下さいね。
あなたがどう感じたとしても、
それが相手に”受け取られなかったら”、
それはあなたの思い違いだったと思って、
「では、どんな気持ちなんだろう?」
とまた気持ちを理解しようとしてみ下さいね。
また、気持ちを汲み取り受け取った気持ちをフィードバックは、
主語をYOU(あなたは)ではなくてI(私は)でフィードバックして下さいね。
YOUでフィードバックしてしまうと、評価や決めつけになってしまい、
相手からしたら受け取りづらくなってしまいますから、
あくまでI(私)はこのように見えたし、感じたし、聞こえましたよ。
というように相手を大切にしながらフォードバックをしてみて下さいね。
感情の明確化のポイント
この感情の明確化のポイントは、
言語(話の内容)に注視するのではなく、
人の気持ちを理解しよう、捉えようとすることです。
その為には、相手のしぐさや表情、姿勢の変化などに気づく観察力を鍛え、
相手の声の微妙な変化に気づけるような聴覚力を養い、
相手が言葉にできていない声を感じれるように、体感覚を養うことです。
すこし抽象的にはなりましたが、具体的には観察力・共感力・ペーシング・ミラーリング・非言語フィードバックの力を養っていくことが大切です。
勿論、一朝一夕にはいきませんが、地道に続けていくことで明確化が少しずつ出来るようになってきます。
また、明確化できるこという結果も確かに大切ですが、
それと同じように、
人の言葉にできていない気持ちを捉えようとすることもまた大切なんじゃないかって思います。
大事な人の気持ちに近づける瞬間があなたに訪れますように。
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