相手の話を聞いていると、

自分の話を語りたくなる時があります。

 

「自分の時はこうだった。」

「自分だったらこうする。」

「そういう時、自分も辛かったからわかる。」

といったように色々な角度から、

自分の話をしたくなる時があります。

 

でも、多くの場合それはあまり役に立ちません。

 

特に相談場面においては、そういうことが多いのです。

 

自分の話をすることを一般的には、自己開示と言いますが、

自己開示をすることで、

相手が心を開いてくれることは勿論ありますから、

そういった目的があれば自己開示も有効です。

 

例えば共感をする目的で、

仕事でミスをした部下に対して

「実は、俺も同じようなミスをして怒られたことがあるんだ。」

「あれは応えたな。そういうミスをするのは辛いよな。大丈夫か?」

って言われると、

「あの上司もそんな面があったのか。」って親近感を感じますよね。

 

こういった自己開示は、有効となりますが、

あまりこういった共感を狙った自己開示というのは少なく、

自分語りになってしまって関係性が崩れてしまうということや、

相手の話を結局取ってしまって上手くいかないということも多いのです。

 

今日は、なぜ自分が足りがダメなのか。

その理由を書いていきます。

①自分の時はこうだった。

この自分の話は、大抵苦労話に繋がります。

「俺たちの時代はこうだった。」

「昔自分が会社に入った時は…。」

といったように、自分の時代の自分の世代の話が続くことが殆どです。

 

すると、世代が違う人にとっては理解が出来ませんし、

その時と同じように扱われても困ってしまうという気持ちが湧いてきて、

それが反発になってしまうことがあります。

 

また、自分の時はと言われると、

今の自分の感じ方や考え方を否定されているようになることもあるのです。

 

また、「自分の時はこのようにやって成功した。上手くいった。」という言葉も、

自分の経験を当てはめているという点で反発を買いやすいですし、

あまり参考にならない場合が多いのです。

②自分だったらこうする。

自分だったらこうするというこの言葉は、

役に立つ時も勿論ありますが、

考え方も行動力も、感じ方もそれぞれ人は違いますから、

同じように出来ることはあまりありません。

 

また、そのやり方は、その方にはたまたま上手くいったものである場合が殆どですから、

それを勧められる相手の個別性をあまり意識していない場合も多いのです。

 

また、自分が上手くいったやり方を伝える時、

ついつい自慢話になってしまったり、

そういうつもりはなくっても、

相手にとってはそう聞こえてしまうこともあるのです。

そして、もしそのように相手に聞こえてしまったとしたら、

あまり人の自慢話というのは聞きたい人はいませんから、

嫌がられてしまいます。

 

ただ、”自分のやり方(その人のやり方)”は勿論参考になる部分がありますから、

そこから学ぶことは大切です。

 

ただ、多くの方は「そのやり方は自分には出来ないよ…。」と感じるものですから、その点は心得ておきましょう。

というのも、その点を意識していないと、

相手に過度に期待(自分のやり方をしてもらう)を持ちすぎて、

出来ない・やらない相手にイライラしてしまって、

お互いに心にしこりを抱えてしまうことがあるからです。

③「そういう時自分も辛かったからわかる。」

この言葉は、相手に共感をする意図で用いられることが多いですよね。

同じような体験をしていた場合、

相手からそのような言葉を言われると、

分かってもらった気持ちがするものです。

 

例えば、僕は以前に引きこもっていましたから、

同じく引きこもっていた方から

「分かる。俺も引きこもっていた時辛かったもん。」

と言われた場合は、

それを体験していない方よりも、

より分かってもらった感じがするかもしれません。

 

一方で、「自分の引きこもり方とは違うからな…。」と感じるかもしれません。

それは、これまでの自分の話を語るリスクと同じです。

つまり、自分と相手は違うんだという気持ちが出てくるということです。

 

さらに、この「自分も同じような経験をしたからわかる。」という言葉の裏には、

自分の体験と相手の体験を同じと捉えている所がありますから、

共感というよりも同情よりのコミュケーションになるのです。
※同情と共感の違いはこちらの記事を読んでみてくださいね。

 

また、こういった言葉を語る時は、

自分の辛かった体験談を思い出して、

その体験談を語りたくなってくることがあります。

 

もしそうなってくると、

自分の話が相手の話を上回り、

相手の辛さを聞くのではなく、

自分が辛かった、

大変だった話を語る時間が増えてしまうことがあります。

 

そこで本来の話し手が聞き手になり、

その大変さに共感されたり、

その辛い体験に対して質問をされると、

さらに聞き手と話し手が逆転していきますし、

話の方向が逸れていきます。

 

すると、話し手がますます自分の話が出来ないということにもなってしまうのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

自分語りがダメな理由を3つ書かせて頂きました。

相手の話を聴く時は、まずは極力自分の話は避けて、

相手が自分の話をきちんと出来るようにまずは援助していきましょう!

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。