自分の体験を振り返り、自分の良かったことを探すこと。

これは、時に大切になってきます。

 

苦しい時に、自分の良くなったことを探すというと、

いわゆる例外といって、

苦しくない時を探すというニュアンスが強いかもしれませんが、

ちょっと違います。

 

違いは、上手く説明できませんが…。(汗)

 

例えばうつ病だと、

日々灰色のメガネかけていようなものです。

全てが白黒で、自分の気持ちすら白黒です。

 

だからこそ、

自分の暗い気持ちや、

嫌な出来事が協調されて見えてしまいます。

 

そして、今までのカラフルな世界を知っているからこそ、

苦しみが増します。

 

そして、そうやって

一見するとすべてが白黒に見えるのも、

うつ病という病気のせいであり、

その病気が心に灰色のレンズをかぶせているのです。

 

そうなると、

日々の中の自分の色づき始めた気持ちも見えなくなってしまいます。

 

カウンセリングをしていて、

少しずつ自分の心を労わったり、

少しずつ自分の気持ちを受け止めて、

その奥にあった生きたいと願う気持ちに触れた時、

その灰色のレンズはどこかへ行き、

本当の色を見せます。

 

でも、日常生活に戻ると、

その灰色のレンズがまた戻ってきて、

全てが白黒に見えます。

 

すると、

「あの時の自分の気持ちは…。」

「私のあの時感じたことは…。」

と、色づき始めた気持ちが日常で見つからず、

落ち込んでしまうこともあります。

 

でも、

でもです。

 

その気持ちはなくなってはいません。

 

見つけ方がわからないのです。

見つけることに慣れていないのです。

苦しみを感じることの方が圧倒的に多かった人生だから、

その苦しみ以外の色づいている気持ちを見ることに慣れていないだけなのです。

 

だから、それを見つけていくこと。

それをカウンセリングの場ではなくて、

日常の中に見つけていくこと。

 

こういった練習もとっても大切なのです。

 

「急に悲しくなって、もうすべてをリセットしたいと感じて…。涙が止まらなくて…。」

そう語るクライアントに、

「そうでしたか…。理由がわからない悲しさって、とても苦しいですよね。

そして、すべてをリセットしたいということですが、

それは、それほどに苦しい気持ちが襲ってきて、

リセットしたいほどに日々苦しいということですよね。」

と伝えながら、

「(中略)…。これまでの人生を振り返った時に、

先程お話をしてくれたように、

苦しみや悲しみや、

自分ではもうどうにもならないような思いや重荷を感じることの方が、

人生において多かったかもしれません。

でも、このカウンセリングを通して、

少しずつ心を開いてきて…。

少しずつ自分の気持ちの奥にあった思いに触れて、

自分の生きたいと願う気持ちにふれ、

蓋をしてきた気持ちに触れ涙し、

少しずつ変わってきましたよね。」

「でも、うつ病ってそういう変わって来たことや、

自分の中にある大切なものを見えなくさせてしまう病気なのです。

だから、家にいる時に見えなくなってしまうのも当然だと思うのです。

でも、こうやって話をしている時も、ほら今も、

また気持ちが込み上げてきていますよね。

それは、苦しみではないですよね。

心の奥から何か温かいものがこみ上げてきますよね。

自分のなかにそれがあることに気づきますよね。

苦しみじゃない何かがあることに気づきますよね。」

「今、こみ上げてくる気持ちや、

少し心を開けた時の恐怖を乗り越えた勇気にも似た力強さ、

苦しかった自分を見つめた時の自分をちょっとだけ労わる気持ち、

今なら思い出すことが出来ますよね。(クライアントは頷く。)」

「それは消えていないのです。今もそこにあるのです。

でも苦しみの波に襲われると、見えなくなってしまうのです。

どこを探したらいいか分からなくなってしまうのです。

それは、探すのに慣れていないだけですから大丈夫です。

まずは、一緒に探しませんか?

日々の生活の中で、きっとそういう肯定的な気持ちもあると思うのです。

そうじゃなければ、思い出せますか?と言った時に、

すぐに「はい。」と言えないと思うのです。」

 

「きっと日常の中にも、あなたの日々の中にも、

きっとそういう気持ちがあるはずです。

一緒に見つけていきましょう。(クライアントは頷く。)」

 

「では、この日にしましょう。(気持ちが少しだけ楽だった日。)」

「その日は朝何時ごろ起きましたか?」

「12時ごろです。どうしても起きる気がしなくて…。」

「どうやって起きたんですか?」

「ずっと気分が悪かったんですが…。このままじゃダメだと思って、

何とか起きました。」

「頑張りましたね。では、ちょっと目を閉じてその場面を思い出して下さい。」

「あなたは、12時ごろ気分が悪く、ベットで寝転がっています。

でも「このままじゃダメだ。起きなきゃ。」と自分を鼓舞する声が聞こえます。

体が重たい。起きたくない。おそらく重かったであろうその体を、

あなたは何とか持ち上げました。

その時の場面をよ~く思い出して下さい。

その時、起き上がろうと自分を起こそうとした時、

頑張んなきゃって気持ちが少ししませんでしたか?」

「はい。」

「その気持ちってここで、変わりたいと願った時のあの下から力強さが少しだけ

こみ上げてくる気持ちに似ていませんか?」

「はい…。確かに…。」

「一つ…、見つけることが出来ましたね。」

「うつ病で気分が重苦しく最悪な時、

ベットから出るだけでも、

相当大変なことです。

でも、あなたは出た。

そして、あなた今見つけましたね。

その時の自分の頑張りを。

変わりたいという願いを。

苦しみ以外の気持ちが、

きちんとあるじゃないですか。

見つけられましたね…。

それで、起き上がった後は何をしていたんですか?」

このように一つ一つ探していきました。

 

すると、他にもいくつか見つけることが出来ました。

 

日々の僕らの世界は、

苦しみだけじゃない。

きっとそうだ。

いや、そうだ。

 

でも、僕たちは苦しくなると、

苦しみ以外の温かさを、

喜びを、

頑張りを、

それらの人生を彩ってくれる気持ちを

見失ってしまう。

何故なら、

悩みが、苦しみが、

それらを覆いかぶすから。

 

でも、苦しくない時が人生はあるという意味ではなく、

”苦しくっても”

そこに、

そしてその中にも、

それらはあるのだ。

 

僕たちはただ、苦しんでいるんじゃない。

一生懸命に苦しんでいるんだから。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。