うつ病の方のカウンセリングをしていると、

兎に角今が苦しくて、

今後どうしたいのかなど到底出てこない事が普通でありますし、

未来が見えなくなる病がうつ病ともいわれてもいますので、

先のことなど思い描けないのです。

 

でも、それだとこのカウンセリングや会話がどこへと向かっているのか、

そんな方向性がわからず、

故に自分が今どこにいるのか、

良くなっているのか、

悪くなっているのか、

それとも変わらないのか、

そういったことが分からなくなり、

方向性を見失ってしまうことがあります。

 

これはクライアントもそうですが、

援助側のカウンセラーにも言えることです。

 

何を先の明かりとして目指していけばいいのかがわからなければ、

道を進むことが出来ませんし、

明かりが見つからなければ、

援助それ自体も難しくなってしまいます。

 

ではどうしたらいいのかというと、

1つの方向性として、

現在出来ていることや出来つつあることを発展させて、

目標とするという方法です。

 

どのようなことかというと、

今、例えば少し自分もよくやってきたのかなと思えるようになったとしたら、

それを明かりにしていく方法です。

 

どのようにするかといえば、

例えば、ねぎらいのワークやねぎらいのコミュニケーションによって、

カウンセリング中にそのように思えたとしたら、

「日常の中で、そのように”今より少しでも自分に対してよくやってきたな”とそう自分を労われるように進めていきませんか?」

というように、カウンセリングで出来ている

出来始めたこと(物の見方や感じ方等)が、

日常生活の中でも増えるように援助をしていくことを明かりにするということです。

 

カウンセリングの時だけ、

自分を労われたというのではなく、

その労わって自分がほっとした感じや、

気持ちが緩んで温かい気持ちを感じたその感覚が、

日常でも感じられるように、

「思えば案外自分はよく生きて来たかな。」

という捉え方(認知)が日常でも少し増えるように援助をしていくということです。

 

何か特殊なことをするわけではなく、

カウンセリング中に出来ていることを日常でも増やしていくということです。

 

「次回までに、その温かい感じを感じた時が来るかもしれませんから、

その時が来たらそれはどんな時だったのか教えてもらえますか?」

「そのような考えが浮かんだ日があったら、その日がどんな日だったか教えてもらえますか?」

というような観察課題をしてもいいでしょうし、

引き続き労いのワークをカウンセリング中に行いつつ、

まずはカウンセリングの場でその良くやってきたなという感じを増やすのもいいでしょう。

 

「今までor今どんなことを頑張ってこられましたか?」

「今までの人生で一番苦労したことは何ですか?」

と過去を振り返ってもいいかもしれません。

 

「奥様とランチにいったのはいつですか?」

と関係性の中で、それが見つかるように援助をするのもいいかもしれません。

 

このように、カウンセリングの中で出始めた明かりが、

より輝くようにまずは援助をしていくという方向性もあるのだ

ということを最近学んだのでした。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。