『頑張って!と伝えてはダメな理由は本当?』

よくうつ病の方に頑張ってと言ってはいけないといいますが、

なぜその「がんばれ!」という言葉を言ってはいけないのでしょう?

はたして本当にダメなのでしょうか?

 

よくあるダメだと言われるその理由に次のようなものがあります。

 

「うつ病の方は、頑張ってきたからであり、もう頑張れないのです。だからそういう方にはこれ以上頑張れというのは酷なのです。」

というものです。

 

確かに限界まで頑張ってきたからこそ、

うつ病になってしまった場合は多くあります。

(勿論他の要因もたくさん関係しています。)

 

そんな方に頑張れ!と声をかけるということは、

確かにもう重荷を背負えなくて倒れているのに、

さらに重荷をのっけて苦しめるようなものですし、

今まで頑張ってきた頑張りを認めていないことにもなってしまいます。

 

だから、そんなことをしない為にも頑張れって言葉はダメというのは納得できますよね。

 

でも、そうすると僕たちはどう声を掛けたらいいんでしょう。

頑張って!と声を掛けることがダメならば、

どう声を掛けたらいいか分からなくなってしまいます。

 

そういう時に思いつくのは、頑張れの反対の「もう頑張らなくていいよ。」

という言葉ですが、この言葉は本当に適切なのでしょうか?

 

確かにこの言葉は、まだ頑張らないといけないと感じている方には、

もう頑張る必要はないのだと許されたように感じて気持ちが安らぐでしょう。

 

でもちょっと待って下さい。

頑張れというのは、頑張ってきた方の頑張りを見てないから出てくる言葉です。

そんなお話を先ほどしましたよね。

 

すると、この「もう頑張らなくていいよ。」という言葉は、

頑張ってきた人にとっては、納得する反面、

今まで頑張ってきた自分を否定されたように感じさせる言葉になるかもしれないのです。

 

頑張ってきた自分も自分ですし、

何よりその頑張りに支えられてきたわけですから、

「もう頑張らなくていいよ。」は、「頑張ってはダメ。」と聞こえて、

今までの自分の頑張りを否定されたように感じるかもしれないのです。

 

ですからここで大切になってくるのは、相手の頑張りを受容すること。

そして同時にあるもう一つの頑張れない気持ちも受容することです。

 

人の気持ちは相反する気持ちが同時に存在しているものですから、

片一方のみを受け止めたり、片一方のみに声をかけたりせず、

両方の気持ちに声を掛けることが大切なのです。

 

今回の場合ですと、「頑張りたい気持ち」と「頑張りたくない気持ち」の両方の気持ちです。

この両方に声をかけることが大切です。

それはこんな言葉がけになるかもしれません。

「今まで頑張ってきたもんね。そんなになるまで頑張れるのはすごいと思うよ。本当は今ももっとやれたはずだし、やれるはずだって感じているよね。そしてそこまで頑張ったからこそもう頑張れない。頑張りたくないと感じる気持もきっとあるよね。それでいいんだよ。」

といったように両方の気持ちに声を掛けることも大切なのです。

頑張れ!と言っていい時もある。

さて、両方の気持ちに声を掛けることが大切ですよとお話をしましたが、

「頑張って」という言葉を使ってもいい時があるのです。

 

なぜなら今まで頑張ってきた方に急に頑張ることを止めさせるのは、

なかなか大変ですから、その頑張れる長所を活かして

「頑張ってゆっくり休んで。」という言葉の方が届く場合もあるのです。

 

今まで頑張ってこれらた方ですから、

その努力の矛先を休む方へと向けることが出来るかもしれないですし、

急に頑張りを止めたくないかもしれないですしね。

 

こういった場合は、次のように頑張れという言葉を使って言葉を掛けることが出来ます。

「うつ病になるまで頑張れる方ですから、今度はその頑張りの方向を自分を楽にしたり、休ませる方向へと頑張って向けていきましょう。」
(※もう頑張るのがうんざりしている方にはこの言葉がけは辛いかもしれません。)

 

また、うつ病の方の中にもずっと苦しんできて、

もう今の状態を何とかして抜け出したいという気持ちが強まってきている方がいます。

 

そういった方は、今頑張りたい気持ちが強まってきていますから、

頑張りたいのです。

 

それにも関わらず、うつ病の方には「頑張れ!」と言っちゃいけないから、

「いやいや無理しない方がいいよ。」と言ってしまうと、

返って逆効果になってしまうのです。

 

心配からそういう風に伝えてしまうのですが、

言葉がけの際はやはり相手の今の状態に合わせてすることが大切なのです。

 

その為、頑張りたい気持ちが強まってきた時は、

「頑張ろう!」って応援してもいいのです。

 

ただ、もしそれでもまた頑張らなきゃ!って思いに囚われて、

また苦しくなってしまわないかが心配なら、

次のように両方に声を掛ける方法もあります。

 

「そうだね!頑張りたい時は頑張っていいんだよ。そして頑張りたくなくなったら頑張らなくていいんだよ。」

 

このように、どちらでもいいんだよって伝えてあげて、

心に余白ができるように接することが出来ると、

きっと本人もどっちでもいいんだと落ち着くのではないかなと思います。

まとめ

このようにうつ病を患っている方に「頑張れ!」

といってはいけないという言葉の裏には、

いろんなケースが考えられますし、

頑張れ!という言葉が必要な場合もあるのです。

 

結局、一番人を傷つけてしまうのは、

「あの人はうつ病だから…。」という評価です。

そして、「うつ病=難しく」触れてはいけないものという印象を持つことが、

目の前の人と接するのをより難しくし、

相手の人となりを見えなくしてしまうのです。

 

例えばうつ病という病を患っていたとしても、

それはその人の心の一部の悩みを表したものであり、

その人のすべてでは全くないということを肝に銘じて、

その人にあった言葉がけをしていくことが何よりも大切なのです。

 

うつ病だから頑張れ!と言ってはいけないんだと、

自動反応的になるのではなくて、

少し立ち止まり、自分と同じ目の前の人を見つめる。

 

その苦しみを見つめ、受け止める。

 

そしてその人だからこそ生じる痛みや苦しみを労わる。

その人の今の状態に合った言葉を掛けていく。

 

そんな一人の人として、お互いにコミュニケーションをとっていきたいものですね。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。