一歩を踏み出している所を見つける時、

その踏み出している方だけを指摘すると上手くいかないことがあります。

 

例えば、「自分の気持ちを我慢してしまうんです。」

と相談に来た方が、

我慢をせずに自分を表現し始めた時というのは、

今までやってこなかった大きな一歩です。

 

それを次のようにフィードバックしたとしましょう。

「今、気持ちを我慢せずに表現しましたね。大きな一歩ですね。」

といったように。

 

これ自体は、特に問題のないフィードバックですが、

こういった「我慢しなくなった。」という方向のフィードバックを繰り返すと、

ご本人の中で、まだ完全には出来ていないわけですから、

ちょっと葛藤が起きるのです。

 

その葛藤とギャップを埋めるべく、

次のような言葉が相手から語られることが多いのです。

「そうなんですけど、やっぱり我慢してしまうのです。」

といったようにです。

 

ですから、このように言葉に出ている

”まだ出来ていない。”という気持ちの方も言葉にすると、

抵抗を生みづらいことがあります。

 

例えば、

「そうやって今まで我慢してきましたよね。

そして、今そこから一歩踏み出して気持ちを表現しましたね。

それは、勇気がある意味のある大きな一歩ですね。」

といったように、両面を入れるのです。

 

他にも、

「例えまだすべての気持ちを表現出来ていないとしても、

今、あなたが我慢せずに表現してくれた気持ちは、

とても私の心に響きました。」

とか、

「Aさんが今でも自分の気持ちをついつい我慢してしまうことがあるのに、

私も気づいています。

それでも、以前に比べるとAさんは自分の気持ちを我慢するのを控えて、

表現しようと試みるようになってきていますね。」

とか、

「我慢している中にも、我慢せずに表現できる気持ちが増えてきましたね。」

といったように両面があることをフィードバックしたり、

その我慢するという片面の中に、

これまでとは違う別の面が含まれるようになってきたと分割したり、

こういったように両面性を含んだフィードバックで、

相手を力づけていくことも有効なのです。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。