気持ちというのは、
不思議なもので、
何とかしようとする程、
何とかできないものです。
ですから、気持ちを解消する一つの道は、
何とかしようとすることをすっかり辞めて、
気持ちと最後まで共にいることです。
つまり「感じ尽くす」という道です。
感じただけでは、
悲しいだけじゃないか、
イライラするだけじゃないかと、
そのように感じる方もいますが、
実はそんなことはありません。
感情に飲み込まれるのではなく、
力を抜いて身を委ねて、
感情の流れにのると、
感情の底に行きつき、
その感情が変わっていくものなのです。
怒っていたけど、
とことん怒っていると、
底にあった悲しみに気づくことがあります。
そして、その悲しみに身を委ねていると、
その怒っていた人への好意や愛情が引き出されてくることがあるように、
感情というのは、
身を委ねていくと変わっていくものなのです。
でも、僕たちは、
感情を何とかしようと、
本当は悲しいのに、
本当は傷ついたのに、
「こんなことで悲しんでもしょうがない。」
と考えて、
悲しみを何とか対処しようとしたり、
「あの人も事情があったんだ。」
と考えて自分の気持ちから離れようとします。
勿論こういった対処は、
日常のちょっとした感情が沸き上がる場面では役立ちます。
ただ、感情がたまっている場合には、
あまり役に立ちません。
そういった時は、
感情を感じ尽くすということが役立つことがあるのです。
感情を何とかしようとして、
抵抗するのをやめて、
感情を最後まで感じることが出来れば、
感情も役割を終えて治まっていくのです。
その為、カウンセリングでは、
その方が自分の気持ちとただ一緒にいれるように援助をすることがあります。
それは例えばこのように…。
「自分を大事にするということは、
自分と一緒に居続けることです。
その為には、自分の気持ちを乗り越える為に言葉にするのではなく、
時間をとって自分の気持ちをただ感じることが大切です。」
「(中略)…。自分の内側から湧き上がっている気持ちをただ感じてください。」
「怖いなと感じても、苦しいなと感じても大丈夫です。隣にいますから。」
「それでは、言葉に出さなくていいですから、
あの辛く悲しかった場面を思い出して下さい。」
「そうやって思い出していると、体はどのような感じがするでしょうか。」
「どのような思いがこみ上げてくるでしょうか。」
「それを湧き上がってくるままに感じてください。」
「そうです。その気持ちと一緒にいてあげてください。」
「あなたも悲しかった。そしてその気持ちも悲しかったのです。」
「だから、今はただ感じてあげてください。」
「それは一緒にいるということです。」
「そうです。そのままただ湧き上がってくるままに感じてあげましょう。」
(表情が少し和らぎ、少しだけ穏やかな表情になる。)
「そうやっていると、悲しみの奥から悲しみだけではない
温かな何かが滲んでくるのがわかりますか?」
(静かに頷く。)
「その湧き上がってくる気持ちも十分に感じてください。」
こういったような関わりを通して、
自分と一緒に居続ける。
そうすることで、
その気持ちの奥にあった気持ちに気づき、
その奥の奥にあった温かさに触れ、
気持ちは役割を終えていくのです。
