悩みをゼロにすることは出来ない。

クライアントの悩みを無くそうとすると、

カウンセリングは一気に上手くいかなくなってしまうことがあります。

 

カウンセリングに相談に来る方というのは、

大体の場合、嫌なことがあってそれをやめたいから来ています。

 

ですから、

「どうなったら解決ですか?」

といった場合に、

主訴(=主な悩み事)が無くなる状態を言葉にすることが多いのです。

 

例えば、

・自分を責めなくなりたい。

・不安を感じなくしたい。

・周りを気にしなくなりたい。

etc…

 

このように自分を今困らせていることを”0”にしたいと仰るわけです。

 

ただ、これはしょうがないことです。

悩んでいて苦しいわけですから、

それを無くしたいと感じるのは、

人として当然のことです。

 

ただ、これをカウンセリングのゴールにしてしまうと、

カウンセリングは上手くいきません。

 

というのも、

悩みを生み出しているものが”0”になることはあり得ないからです。

自責も今後の人生でなくなることはありませんし、

不安が0になって生きることもできませんし、

周りを気にすることを0にすることもやはりできません。

 

そして、仮にそれらを0に出来たとしてたら、

人間性を失ってしまうことにもなってしまいます。

 

人は、自責があるから反省して、

同じ過ちを繰り返さなくなりますし、

不安を感じるからこそ、

将来に備えて対処行動を取ろと考えますし、

周りの目を気にするからこそ、

お化粧したり身だしなみ整えたり、

気配りをしたりすることが出来ます。

 

でも、その大元の気持ちを0にしてしまうと、

そういったことが出来なくなってしまい、

社会性も失ってしまいますし、

危険知らずで、人を傷つけたり、

自分が身体的に傷ついたりと、

かなりリスクが大きな人生になってしまいます。

 

ですから、カウンセリングでは”~を無くす。”という契約は、

あまりよろしくないのです。

 

さらに、0にすることを前提に援助をしていると、

かなり厳しい目でクライアントを見ることになります。

ちょっと良くなってきたとしても、

まだ自分を責めている=治ってない。

といったように捉えたりします。

 

すると、クライアントが少しでも周りを気にせずにいられたことを見つけても、

まだだなと捉えたりして、

そこを改善しているという余裕がある目で見られなくなり、

それがカウンセラーもクライアントも苦しめてしまいます。

 

また、悩みを無くすという発想で関わっていると、

不安があるんですよねとか、

自分を責めてしまうんですよね。

という言葉を聞くとそれらをゼロにした方がいいんだろうと、

なぜだか考えてしまうことがあります。

 

でも、ゼロにすることは出来ないし、

感じていいものや、

感じて然るべきものがあると捉えていると、

心に余裕が持てますし、

例えばその不安が「初めての就職活動に対する不安」であれば、

それは出て当然の不安ですし、

感じていいものであると捉えることが出来ます。

 

周りが気になってしまうというのも同様ですし、

自責も同様です。

 

周りを気にした方がいい時や、

自分を責めた方がいい時もあるのであり、

とどのつまり、

どれくらいそれを気にしているのか?

という総量の問題なわけなのです。

 

ですから、0にするのではなく、

○○を無くすのではなく、

○○の総量が減るように援助をしていくということです。

 

そういう視点で関わると、

援助の幅が広がってきます。

 

さてさて、

偉そうなことを書きましたが、

何を隠そう”0”にしようとしていたのは、

以前の僕自身です。(滝汗)

 

つまり上手くいっていなかったわけです。

 

ですから、皆さんにはそうならないように、

今日記事を書かせて頂きました。

 

ゴール設定の仕方もそのうち書かせて頂きますね。

 

それではまた次回お会いしましょう!

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。