うつ病の方を援助する際の大切な一つの視点。

「以前の自分に戻りたい。」

そう語る方は多くいらっしゃいます。

 

例えば、うつ病の方は「以前のように仕事に行けるようになりたい。」

という方が多いです。

 

この答えは当たり前と言えば当たり前です。

ただ、元の状態に戻ることが果たしてクライアントさんにとって、

ベストな選択肢かというと、

ちょっと「?」マークがついてしまう時があります。

 

というのも、例えばうつ病の方というのは、

うつ病になっただけの経緯があり、

今までの生き方では立ち行かなくなった部分があります。

 

だからこそ、限界を迎えて鬱という症状を呈していると考えることが出来ます。

 

だからこそ、今の状態のまま元に戻ってしまったら、

また時間がたってうつ病になってしまうかもしれない危険性があるのです。

 

心がこれ以上歩き続けて壊れないように、

強制定期に止めてくれている状態が鬱状態ですから、

生き方を見つめなおすタイミングでもあるのです。

 

勿論、心の癖が色濃くうつ病と関係していない場合は、

お休みをすることで回復へと向かい、

その後繰り返すことはないこともあります。

 

ただ、心の癖が色濃く関係している場合は、

その点を見つめなおして、

以前よりも少しだけ違った形の自分で戻っていくことが大切なのです。

 

こういったことは、実はクライアントさん自身も感じていることが多いのです。

 

以前にカウンセリングをしていた際に、

あるクライアントさんがこんなことを語ってくれました。

「以前は、頑張ることが美徳でそういった生き方が大切だと思っていた。

でも、その生き方で体が壊れてしまった。

なので以前の自分に戻ってしまったら、また体も心も壊してしまう。

だからこれまでと違う自分で戻っていくことが必要だと思うんです。」と。

 

まさにその通りだと感じましたし、

その方は生き方を変えていこうと静かに自分と向き合っていました。

 

体が心が止めてくれたことには、きっと意味があって、

僕たちはその意味を目の前の足を止めた方と共に探り、

また違った自分で復帰できるようにサポートをしていくことも、

とても大切だと感じるのです。

 

人はそれを成長というのかもしれませんし、

人生の転換期と語るかもしれません。

 

いずれにせよ、

”何か”を変えるタイミングであるのです。

 

そしてそれはマイナスな方向ではなくて、

目の前の方にとっていい方向へと舵を切り直すタイミングなのです。

 

多くの苦しみに襲われ、

痛みしか目につかない時に、

それをゆっくりと探っていくのは、

とても難しくもありますが、

援助側だけでも、

その苦しみの奥にある”何か”を信じることが

何よりも大切になるのだと、

今、そう感じるのでした。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。