さて、前回の記事の続きです。

「出来てない。変わっていない。」と語るクライアントに対して、

どのように接していくことが大切なのか?

ということを前回お話をさせて頂きました。

 

出来てない。

変わってない。

 

と言われたら出来ている所や、

変わりつつあるところをフィードバックしていくことが大切とお話をしましたが、

このコミュニケーションでは上手くいかない場合があります。

 

なぜかというと、

こういったフィードバックは、

クライアントが最も気にしている領域で

出来ている・出来つつあることの場合があるからです。

 

どういうことかというと、

例えばうつ病で仕事に行けなくなったことを思い悩んでいる方に、

「私生活では、朝早く起きられるようになってきたじゃないですか。」

とか、

「以前は出来なかったように休むことが出来るようになってきたじゃないですか。」

といったようなことをフィードバックしたとしても、

「いや”プライベート”ではそうなんですけど…。」

という歯切れの悪い返答になり、

その後に多くの場合次のような言葉が続きます。

「でもやっぱり仕事に行こうとすると、動悸がして…。」

というような言葉です。

 

どうしてこのようなことが起こるのかというと、

いくらこちらが出来ていることや、

出来つつことをフィードバックしたとしても、

その出来ている・出来つつあることの領域は、

クライアントにとっては、メインの関心ごとでのことではないからです。

 

つまり今回の例で言えば、

仕事がその関心ごとにあたり、

仕事面での改善が見えないと、

他の領域でいくら良くなっているとしても、

復帰できる気がせず、

やっぱり変わってないという評価になってしまうのです。

 

ですから、仕事の面での出来つつあることや、

出来ている所をフィードバックしていくことが大切なのです。

 

つまり相手の関心ごとの領域内での変化や出来ていることを

フィードバックしていくことです。

 

例えば、

「仕事のことを思うと動悸がして一番大変だったのはいつでしょうか?」

「二か月前位に、休職せざるをえなかった時は大変でした。」

「そうでしたか。2ヵ月前は大変だったのですね。」

「それで、そこまで大変じゃなかったことやいくらかマシだったことはありませんか?」

「そうですね~…。そういえば、昨日の朝は仕事のことを考えてもあまり動悸がしなかったような気がします。」

 

といったように最悪を聞いて基準点を作り、

そこからいくらかマシになったことや、

そこまで大変じゃなかったことを聞いていきます。

 

そうすると、ずっと最悪なわけじゃなく、

その最悪な感じも変化しているものだと、

そのように相対化されていくのです。

 

勿論、マシな時期があったんですね。

だけで終わっては意味がありませんから、

そこからつなげていく展開力は必要です。

 

また、仕事の領域において動悸がしたとしても、

前よりも行動範囲が増えて来たとか、

逃げなくなったとか、

立ち向かえるようになった。

 

といったようなフィードバックも大切になります。

 

このように相手の関心を持っている領域内での変化を

フィードバックすることで少しずつこんなことも出来ているのでは?

と出来ていることや変化の種を伝えていくのです。

 

すると、少しずつ出来ないという評価と拮抗してくるようになってきます。

勿論、そうならない場合もありますがそれはまた時間があった時にお話をしていきますね。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。