心の読みすぎへのアプローチ

人はよく読心術を使います。

「今のあの目つきは、私のことを嫌っているんだ。」

「私が嫌だから、逐一注意してくるんだ。」

このように、人は読心術をよく使います。

 

読心術とは、読んで字のごとく、

相手の心を読むことで、

認知行動療法では認知の歪みの一つの数えられ、

「心の読みすぎ」と呼ばれています。

 

でも、人には「相手の心を読む能力」は備わっていません。

 

ある程度、想像することはできますが、

それがあっているかどうかは、

相手に「確認」をしないとわかりません。

 

でも、悩みを抱えてしまう場合というのは、

相手の小さな行動が目に付き、

そこから思いを馳せて自分なりに悪い方に

相手の心を読んでしまいがちです。

そして、そういった小さなことがつもりにつもって

気分が落ちこんでしまうことが間々あるのです。

 

人に気持ちを確認するのって怖いですし、

確認する必要すらないと真実のように感じている時もありますから、

確認をしないというのはしょうがないことではあるのです。

 

ただ、悩み相談の場面では、しょうがないで見過ごすと

ますますと相手の苦しみが大きくなることがありますから、

相手の見方が凝り固まっていて、

それが苦しみを生み出している場合は、

正しく相手のことを理解するのを手助することが大切です。

 

では、どのようにそれをしていくのかというと、

次のような質問から少しずつ、

相手の捉え方に関する情報を集めていきます。

 

「○○と感じた場面を教えて頂けますか?」

「どんな時に○○さんがあなたを嫌っていると感じたのですか?」

「どんなしぐさが、あなたを○○さんが私のこを嫌っていると判断させたのでしょうか?」

「どんなことから、そのように気付いたのですか?」

 

そうやって相手が自分のことを嫌いと判断した素材を集めていきます。

すると少しずつ状況が見えてきます。

 

するとすると、その行動は嫌っているんじゃなくて、

例えば仕事が多忙で対応が雑になっただけであり、

その当人にだけじゃなく、他の人にもそうだったことがわかるかもしれません。

 

または、その行動が起きたのは、

その方は大切な方を亡くして、

余裕をなくしたのかもしれません。

 

その行動は、その方が傷つきやすく自信のなさの表れで、

威張り散らしているのかもしれません。

 

嫌いなのではなく、理解されてないと感じて声が大きくなっただけかもしれません。

 

このように具体的に聞いていくと、

相手がクライアントさんが語るものと別の意味をあらわしている可能性が見えてきます。

 

そうやって具体的に見えてきたら、

今度は相手に対して少し別の見方が出来るように質問をしたり、

語りかけていきます。

 

例えばこんなように。

 

「○○さんの行動は、もしかしたら△△だったという可能性はありそうですか?」

「これまであなたからお話を聞いていくと、○○さんはあなたのことが嫌いというよりもむしろ××ということをあなたに表現しているように見えるのですが、いかがでしょうか?」

「○○さんは、あなたに期待しているという可能性はありませんか?」

「○○さんの××というしぐさは、戸惑いを表しているのではないでしょうか。」

「○○さんが××という行動をする時、それは××さん自身の○○を表しているのではないでしょうか。」

 

このように別の見方を一緒に探求したり、

嫌いと判断した行動を取り上げて、

それを別の意味に変えて提示(リフレーミング)をしたりすることで、

少しずつ枠組みが変わるように関わっていく。

 

そんな関わり方も読心術が強い方には大切なのです。

 

ただ、相手は自分の捉え方が真実だと感じていますから、

それに挑戦するような形ではなく、

その捉え方を受け止めつつ、

少しずつ他の可能性を探索していくのです。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。