感情反射とは、相手の話を聞く際の応答技術の一つです。
どのような応答技術かというと、
相手が語ってくれた感情を伝え返す技術です。
例えば、相手の「最近イライラするんだ…。」と語ってくれた時に、
「イライラするんだ…。」
といったように相手の感情を伝え返すことを「感情反射」と言います。
人が話をする時は、何か感情が動いた時であることが多く、
僕たちが聞くべきことの一つは、
その動いた感情を聞くことです。
ですから、感情反射をすることであなたの気持ちを分っていますよ。
というような相手に対するメタメッセージ(含意)になるのです。
※より詳しく感情反射を知りたい方はこちらの記事を読んでみてくださいね。
さてさて、今日はこの感情反射を具体例を交えながらご説明していきます。
感情反射はどんな時に使う?
さて、この感情反射ですがどのような時に使うのでしょうか?
この質問に答えていく為には、なぜそもそも感情反射をするのか?
というその理由を説明していく必要があります。
なぜならどの技術も”目的や意図”があるからです。
それを知らずのままただ技術を繰り返しても、
結局効果がないといったことが起きることがありますから、
まずは感情反射の”目的と意図”を知識として覚えておきましょう。
感情反射の主な目的と意図は次の通りです。
1.感情を伝え返すことにより共感になる。
2.感情を伝え返すことにより自己理解が深まる。
3.感情を伝え返すことで、目の前の人の感情を受け止める。
- 人は感情を分って欲しいですし、共感してくれていると感じると自分の感情を分ってくれる人もいるんだと力が湧いてくる時もありますし、その心の痛みが少し軽くなる時があります。また、大げさな表現をすると、自らの感情を共有することで「この感情を抱いているのは私だけではないのだ。」と感情的な結びつきを他者と感じ、一人ではないのだという安心感にも繋がることがあります。
- 自己理解が深まるというのは、他者から感情の言葉を客観的に繰り返されることで、自分の感情を内的に振り返るプロセスが入り、「自分はやはりこういう気持ちだったのだ。」とか、「こういう気持ちでいいんだ。」「私は”今”こういう感情なんだ。」といったように、感情反射により自分の感情を見つめるプロセスが入ります。それにより自分の世界観が広がったり、気づきが起きたり、感情を再認し自己理解が深まっていったりするのです。
- 人が悩む理由の一つは、自分の感情がどうにもならないからです。つまり、自分では感情に対してどうしようもないと感じていたり、自分で自分の感情を受け止められずに避けたりし、対処が困難と感じているということです。
そういった時に自分では受け止められない感情も、他人から受け止めてもらえると人は安心するものなのです。
また、「感情反射」は傾聴の聞く技術の一つですが、
この技術が成立した背景には、
クライアントの心の中には問題を解決する力が内在しており、
カウンセラーはそれが開花するように、
クライアント自己探索を安心して行い、
カウンセラーがその邪魔にならないように鏡になったように話を聞いていくのだ。
そしてそれには技術ではなく、カウンセラーの在り方も重要なのだ。
というカール・ロジャースの人間に対する信頼や、
そういった思いが背景にあったことも忘れてはいけないポイントです。
さて、ちょっと長くなりましたが…、
それでは具体例を交えて実際にどう用いていくのかを見ていきましょう。
感情反射の具体例
感情反射は当然相手の感情が動いた時に、
その感情を伝え返していく時に使います。
ただ、すべての感情を逐一拾って伝え返すわけではありません。
相手の気持ち中で特に大切だと聞き手側が感じた気持ちを伝え返したり、
両価性のある感情(ex.イライラするけれど、ちょっと寂しくもある。)
を伝え返したりしていきます。
その際に相手の邪魔にならないように短めに伝えていくこともポイントの一つです。
ではさっそく具体例にいってみましょう。
「具体例:ポジティブな感情」
相手「昨日映画観に行ってさ、楽しかったんだよね!」
自分「へ~映画観に行って楽しかったんだね!それで何観たの?」
相手「昨日久しぶりに休みだったんだよ。それでいやぁめっちゃゆっくり出来て、リラックスクス出来たよ。」
自分「そっか~よかったね!めっちゃリラックスできたんだ~。何をして過ごしたの?」
黄色の線の部分が伝え返し相手の感情とそれを伝え返す感情反射の部分です。
このように相手の感情を受け止めて、伝え返していきます。
この例は一般的にポジティブと言われる感情ですが、
一般的にネガティブと言われる感情でも用い方は同じです。
「具体例:ネガティブな感情」
相手「最近仕事が忙しくイライラしちゃうんだよね。」
自分「そっか。イライラしちゃうんだね。」
相手「彼に振られて悲しい…。」
自分「そうだよね。それは悲しいよね…。」
このように感情を伝え返していきます。
ただ、感情反射だけでは会話が続かないことがありますから、
その場合は、感情反射にプラスワンで質問をしていきます。
上記の例で言うと、
「そっか。イライラしちゃうんだね。何か仕事であったの?」
「そうだよね。それは悲しいよね…。話しづらいかもしれないけど、何があったか教えてくれる?」
といったように青色の質問を加えていきます。
そうすることで会話が展開していきます。
また、青色のところは質問でなくても、
自分の感じたことでも、
共感的な言葉でも、
受容的な言葉でも、
ねぎらいでも他のコミュニケーションでも大丈夫です。
このように感情を受け止めた上でプラスで伝えていくと、
会話は進みやすくなっていきます。
感情反射上級者の為の例①
人の感情は一つだけではありません。
会話の瞬間も様々な気持ちが出てきており、
その様々な気持ちの中で揺れ動いています。
その揺れ動きは非言語にも現れますが、
言語的に判断する場合は、「でも、だけど、いや」といったような、
前文を否定する言葉です。
例えば、
「会社を辞めたいんだけど、今の仕事はさ人間関係だけはよくて、そこは気に入っているんだよね。」
この言葉には、
「会社を辞めたい」気持ちと、
「人間関係がよく気に入っている」気持ちの二つが出ていますよね。
感情反射をする時に、
「会社を辞めたい気持ちがあるんだ。」
とか、
「人間関係はよくて気に入っているんだね。」
といったような片方だけを伝え返すと、
もう片方の感情が認められていなくて、
騒いでしまう可能性があります。
どういうことかというと、
例えば「会社辞めたいんだ。」だけを伝え返すと、
「いや、そうなんだけどさ。人はいいのよあの会社。なんか恵まれているっていうかさ…。」
といったように、人間関係は気にっているという気持ちが出てくることがあるということです。
ですから、こういった葛藤を抱えていたり、
複数の感情が出ている場合は、
その感情をまんべんなく受容していくことが大切な時があります。
例えば、「会社を辞めたくて、でも人は気に入っているんだね。」といったようにです。
二つの気持ちや、それ以上の気持ちを同時に伝え返していくことも大切なのです。
「好きだけど、時々どうしようもなく嫌にもなるんだね。」
「会いたいけど、怖くもあるんだね。そりゃそうだよね。」
「続けたくないけれど、続けたい方がいいと思っているし、もうやめないととも思っているんだね。」
「寂しいけど、一人でいたくもあるんだね。」
といったように両価性(葛藤)を丸っと含んで伝え返しくこともできるのです。
感情反射上級者の為の例②
相手が語る感情に敢えて楔を打つこともあります。
楔を打つとは、相手が語る気持ちを敢えて協調して伝え返すということです。
ちょっと具体例で説明していきましょう。
親子関係で葛藤を持っているクライアントさんで父親のことが大嫌いな方でした。
その方は父のことが嫌いと語り、早く家から出たいと語る一方で、
家族との絆を心のどこかで求めているように見えました。
ある時に父親とかなり久しぶりに外出する時があり、
そこで自分が好きなものを買ってもらったそうです。
その際にこんなことを語ってくれました。
「父と久しぶりに嫌でしたけど、自分の引っ越しようのものを買わなくてはいけなくて、それを選ぶために一緒に家具屋さんに行ったんです。なんかよくわからないですけど、父は張り切っていて…。あ~めんどくさいなって思ったんですけど、なんだかそういう姿を見るのも久しぶりで懐かしいなって思って…。」
この会話の中には、クライアントの父親が嫌いな気持ちと、
どこか懐かしさを感じる気持ちの両方が見て取れますよね。
そこで「めんどくさいとは思ったけど、懐かしくも感じたんですね。へ~そうですか。懐かしかったんですね。」と敢えて懐かしいという感情を強調して伝え返したのです。
そしてさらに「どんなことを思い出したんですか?」といったような懐かしさにアクセスするような質問をしていきました。
こういったように敢えて協調(楔を打つ)ことで、その気持ちにとどまってもらうように援助をしていくこともあります。
とはいえ、これは上級者向けですから、
一番最初は相手の会話の邪魔にならないタイミングで、
感情を伝え返すだけで十分です。
長く言うと相手の言葉を遮ってしまうことがありますから、
「寂しいんだ。」
「悲しいんだ。」
「嬉しいね。」
「楽しいね。」
「好きなんだ。」
といったように短く返せば、
会話中でも上手に間に入ることが出来ますから、
是非挑戦してみてくださいね。
長くなりましたが、最後までお付き合いいただいてありがとうございました。