自分を責める人に掛ける言葉。

うつ病になると、うつ病のせいで認知が過度にゆがむことがあります。

また、そのせいで自分を責めてしまう自責傾向が強まる場合があります。

 

普段そこまで自分を責めなかったのに、

うつ病の影響で過度に自分を責めてしまう。

そんなことがあるのです。

 

その時に大切なことは、責任を切り分けるトレーニングをするということです。

なぜなら自責傾向が過度に強い場合は、

人の責任も負ってしまっていることが多くあり、

全てが自分の責任と思い込んでしまうことがあるからです。

 

では、具体的にどのように自分の責任と相手の責任を切り分けていけばいいのでしょうか?

 

ここでは以前に書いた、紙を使って切り分けるトレーニングをする

なぜ責任を切り分けると上手に悩めるのか?

に書いてある内容とは別の3つの援助方法をお話していきますね。

質問によって切り分ける方法

前述の記事の紙を使って切り分けるトレーニングの他には、

質問によって責任の切り分けが出来るようにお手伝いをすることもできます。

 

自分を責めている場合、冷静に自分を振り返ることが出来ません。

 

そして過度に歪めて現実を解釈してしまっている場合もありますから、

5W1Hを意識しながら出来事を把握していくことも役立ちます。

つまり、「いつ・どこで・誰が・何を・どのように」を

相手が自分を責めている状況に対して明らかにしていくのです。

 

状況が浮き彫りになってくると例えば、

「新人であるあなたの責任ではないよ。」

「それは遅く残らせた上司の責任だよ。」

「そもそも会社側の体制の問題であり、あなた一人の問題ではないよ。」

「その形でキッチリ伝えたのであれば、それは誤解したのは相手にもかなり責任があると思うよ。」

といったようなことを言えるのです。

 

こういったコミュニケーションの結果として、

相手の見方が広がり、自分を責めなくてもいいんだ。

相手もその責任の一端を担っているのだと、

理解できるようになり自責感が減ってくることがあるのです。

 

また、本人に考えてもらう場合は状況を明らかにした上で、

 

「それは、他の方が責任の一端を担っている可能性はありませんか?」

「たまた偶発的に起きた可能性はありませんか?」

「職場環境などの環境の影響は考えられませんか?」

「その状況下の中で最善を尽くすことが出来ましたか?」

「選択の余地はありましたか?」

「その問題点の内、どの部分があなたの責任で、どの部分が相手の責任でしょうか?」

 

といったように、本当にすべて自分の責任なのか、

その状況下では誰もそれ以外の選択はできなかったのではないか。

といったことを吟味しながら責任切り分ける作業や、

ベストを尽くしていたのでは?

ということを質問を通して考える援助していくことができます。

ノーマライズ(一般化)する方向性

もう一つの援助の方向性としては、

ノーマライズの方向性です。

ノーマライズとは一般化することです。

多くの人がそうですよ。

というニュアンスのことを伝える事で、

あなただけがそうなのではないですよと伝えて、

安心してもらう方向性です。

 

自責が強い方の中には、思いがけない事故にあったり、

今まで出来ていたことが出来なくなったり、

そういったことの原因が自分のパーソナリティに原因があると判断したり、

自分の能力や努力が足りないからだと個人的な要因のせいにする方がいますが、

それは得てしてご本人のせいでないことがあるのです。

 

どういうことかというと、うつ病になると意思決定力が鈍ります。

それをうつ病のせいではなく、自分の判断力が落ちたせいであり、

そのせいで相手に迷惑をかけているのは、自分の責任である。

といったように考える方が間々いますが、

それは、ご本人のせいではありませんよね。

 

ですからこういった場合は、

「一般的にうつ病になると皆さん判断が鈍るものです。

ですから、それはうつ病のせいであってあなたのせいではないんですよ。」

とノーマライズすることができます。

 

この他にも、事故で身体が不自由になった方がいて、

その方が片付けが上手くできず申し訳ないと思っていたとしましょう。

その方には、

「身体が不自由なんですから、片付けがうまく出来なくて当然ですよ。

片付けようとしてくれているの知っていましたよ。」

と、出来ないことを一般化しつつ労うことが出来ます。

 

この他にも

「初めて好きになった方に最初から上手く気持ちを表現でる方なんていませんよ。」

と初恋の人に上手く気持ちを言えない方に一般化することも出来ます。

 

こういったように一般化をされると、

「あ、そっか。みんなそうなのか。自分もこれでいいんだ。」と、

安心して結果的に自責感が少なくなることがあるのです。

援助者側が相手の頑張りを認める方向性

最後の方向性は、援助者側が相手の頑張りを認める方向性です。

自責傾向がある人は、そこまで自分を責める程思いを向けてきたことがあり、

ご自分なり努力をしている方が多いのです。

 

ただ、それをご本人が認めていない場合が間々あるのです。

 

そういった場合は、ご本人が自分の頑張りを認められず、

自分の努力が不足していたからだと自分を責めてしまっていることがあるのです。

 

その為、援助者側がご本人の努力を認めて、

一生懸命に最善を尽くしてきたではないですかと、

ねぎらう事でその自責感を少しでも和らげてもらうことが出来る時があります。

 

実際に僕がカウンセリングで伝えたことがある言葉を書いていきますね。

 

「○○さんは、仕事を辞めたことも自分のせいと仰いますが、

うつ病になる迄頑張れたのは、誰もが出来る事ではありませんし、

それほど頑張れたご自分を今は褒めてあげてもいいのではないでしょうか。」

 

「そんなに苦しみを、痛みを抱える程頑張れた方を誰がこれ以上責められるでしょうか。

もうこれ以上、お一人で抱えなくてもいいんじゃないでしょうか。」

 

「それほど思いを向けれたからこそ、

自分を責めるお気持ちがあることに

もうそろそろ気づいてもいいのではないでしょうか。」

 

このように、援助者側が相手の頑張りを認め労わっていく。

そんな援助の方向性もあるのです。

まとめ

さていかがでしたでしょうか?

 

「質問によって切り分ける方法」

「ノーマライズをする方法」

「援助者側が相手の頑張りを認める方法」

 

この3つをご紹介していきました。

何がご本人にとっていいのかは、

その時に判断になりますので、

これがいいということは残念がながら言えません。

 

というのも自責の程度も、その理由も人それぞれ違うからです。

 

ですから、原則的にそういった個別な思いを捉えて、

その思いを汲むことから始めることが大切です。

 

そして、もしその二つが出来たら、

その自責感を少しでも減らす援助をする方向性として、

このような方向性もあったなと思い出して頂けたら幸いです。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。