「うつ病の時は重要な決断をしてはいけない。」
そんなお話を聞いたことがある人は意外といるのではないでしょうか。
カウンセリングをするようになってから、
その言葉の意味を少しずつ分かり始め、
最近本当にそうだなと実感する出来事がありました。
そうそう、うつ病というのは実は二つに分かれているのを知っていましたか?
気分の落ち込みがずっと続く大うつ病性障害と、
気分の浮き沈みが人より激しい双極性障害という大きく分けて二つがあるのです。
一般的に皆さんが「うつ病」というと大うつ病のことを指している場合がほとんどかなと思います。
その為、これからうつ病という言葉を使っていきますが、
この場合も大うつ病、つまり気分がずっと落ち込んだ方を指している
と考えて下さいね。
さて、このうつ病ですが何が厄介かというと、
気分が沈むことに加え、意思決定力や食欲・睡眠欲・性欲・やる気などの減退
といったように様々な心身の症状を呈するからです。
そういった気分や心身の自分の状態に引っ張られて、
気分が滅入って来て、活動意欲が落ち、
それでさらに気分がめいって来て…。
という負のスパイラルにはまるからです。
すると、
気分も上がらないし、憂鬱な気分にさせられますので、
”いつもより”世の中に対してや自分に対して悲観的になったり、
”いつもより”自責傾向が強くなったりするからです。
それもこれもうつ病のせいで、
いつもの状態よりも認知が極端に歪んできたり、
自責が強くなったり、決断が出来ずにいたり、
やる気が起きなかったりするのですが、
これがまた”うつ病という病気のせい”という認識されることが、
まだまだ少ないのです。
だからやる気がないとか、もうちょっと前向きに考えたらとか、
本人のせいというように捉えられることがあるのですが、
それはうつ病のせいであって、
改善するまでやる気も出ないし、
前向きにも考えられないわけなのです。
そしてですね。
こういう認識を周りが持っているということはですよ。
うつ病になった本人もそのような認識を持っていることがほとんどなのです。
気分が沈んだりやる気がでないのは、
自分のせいだと考えて責めてしまったり、
将来のことを過度に悲観的に考えてしまうのも、
決断力が鈍ってきたのも、
全て自分のせいなんだと考えがちなのです。
それはすべてうつ病のせいなのにです。
ただ、そう捉えてしまうのもうつ病という病のせいなので、
しょうがないわけではあるのですが、
ご本人はそれに気づいていません。
だからうつ病のせいで過度に悲観的に考えていて、
いつもよりひどい考えをしてしまっていて、
その思考が本当の自分の気持を表していると、
惑わされてしまうのです。
だからうつ病のせいで、ちょっとしたことで自分を責めてしまう。
たった一つの小さなミスで仕事をクビになる怯えてしまい、
それならば自ら辞めてしまおうと、
そんなことすら考えてしまう。
また、いつもより過度に自分を責めたり、
気分の落ち込みのせいで感情が極端に振れて、
悲しみの底に一気に行ってしまう…。
そんなこともあるのです。
悲しみの底に辿り着いた方はお分かりかと思いますが、
もうそこでは冷静な決断なんて出来ません。
感情の波にさらわれてますから、
僕たちはなす術がないのです。
その荒波の中で僕たちは藁をもつかむ思いですから、
そこから抜ける為ならと、最悪な決断もしてしまうことがあるのです。
だからもしあなたの身近な人が、
うつ病を患っていて、
何か大きな決断をしようとしている時は、
注意してあげて下さい。
この前も僕の目の前に「仕事を辞めようと思っています…。」
と泣きながら話す方がいらっしゃいました。
何度か相談を受けていて、
今までのお仕事の中で一番大切に取り組んでいたこと知っていた僕は、
それが彼の本意ではなく、うつ病の症状が今はひどくなったのだなと、
そう感じました。
というのも、入室時から明らかにいつもと状態がちがく、
悲しみに溢れていたからであり、
ほんの小さなミスを過度に責めていたからです。
荒波の中で僕たちは、なす術がありません。
でも、その荒波の中にいる目の前の人に、
僕たちはその苦しみを受け止め、
理解を示す事が出来ます。
荒波を泳いでる人に対して、
やはり最初は受け止めることからです。
でないと溺れてしまいます。
次にすることは、タオル掛けて抱きしめてあげることです。
そして「もう安心だよ。怖かったよね。」って、
「よくやってきたね。」ってさすりながら労わることです。
そして落ち着いてきたら思いを汲んで、
どんな思いで泳いできたのかを、
その気持ちを汲み取り言葉を掛けていくのです。
そして、いつもとちがく、
溺れてしまいそうになったのは、
違う方向に向かってしまったのは、
あなたのトレーニング不足でも、
あなたのせいでもなくて、
病気のせいなんだよって。
あなたが悪いんじゃないんだよって。
そう伝えてあげる。
そんなことが大切なんじゃないかなと思うのでした。