「前を向かなくていいんですか?」
以前カウンセリングでこんなことを聞かれたのです。
僕たちは前を向かないといけないと思っていることが多くあります。
そしてその思いに囚われてしまって、
自分たちを苦しめてしまうことが多くあります。
前を向かなきゃいけないと思い込んでいると、
悩んでいる自分や立ち止まる自分に許可が与えられず、
悩んでいること、忘れられないこと、
今の状態でいる自分のすべてがダメにさえ感じてしまいます。
このように一方向に思考が偏ってしまうと、
そうでない自分がダメに思えて、余計に苦しくなることがよくあるのです。
それは、例えば…
「悲しんでいてダメだ。」
「泣いてはダメだ。」
「怒ってはダメだ。」
「世間一般から外れてはダメだ。」
「皆と違うのはダメだ。」
といったように、○○でないとダメだという禁止令を自分に出すと、
それが出来てない自分がいつにもましてダメに感じてしまうのです。
本当は、○○ではなければいけないことや、
○○をしなければいけない訳ではないのに。
冒頭のクライアントさんもそうでした。
そこで、僕はその方にこのように伝えました。
「前を向かなくていいんですよ。」と。
そう、すごくシンプルな返答です。
するとその方はほっとした表情で、
「え?いいんですか。前を向かなきゃいけないと思っていたのでなんだか安心しました。」
と答えてくれました。
僕たちは自分に勝手に縛りを与え、禁止令を出してしまう時がある。
それは、誰からか教わってものかもしれないし、
自分で決めたものかもしれません。
でも、それに苦しくなったらそろそろそれを辞める時期です。
ただ、自分に許可を出す事はなかなか難しい時があります。
きっと今回のクライアントさんもそうだったのでしょう。
だから僕が代理で許可を出したのです。
「○○してもいいですよ。」と。
人は、自分では許せないことも、
自分では許可が出せないことも、
人から許可をもらうことで、許可を出せるようになることもあるのです。
だからもし、あなたの目の前の人が
・○○ではなければいけない
・○○をしなければいけない
なんて思いに囚われていて、尚且つ苦しそうであれば、
○○しなくていいんだよ。って許可を出してあげよう。
そしてもし、それでも「やっぱり○○しなければダメじゃないだって…。」
という言葉が出て来た時は、その思いにペースを合わせて、
「そうだよね。○○しないといけないね。そしてね。○○したい時はしていいし、したくない時はしなくていいんだよ。」ってプラスで伝えてあげよう。
僕たちは一方向だけの選択肢しかないと感じる時、苦しいのだ。
ただ、そのしなければいけないと感じている選択肢も、
自分で選べるんだと感じることが出来れば、
心に余裕が広がっていくものなのです。
だから冒頭の方に僕は次のようにも伝えたのです。
「前を向きたい、向かなきゃと思う時は今まで通りその思いを大切にしていいんですよ。そして、前を向きたくないなと感じる時は、前を向きたくないその思いを大切にしていいんですよ。」と。
僕たちの心には、両方の葛藤する気持ちがあるのです。
僕たちには、いつだっていろんな気持ちが引っ張り合っているのです。
どの気持ちにも許可を与えることも、
また受容の一つなのではと感じます。
勿論、暴力や犯罪、自殺などに関しては断固NOですよ。