カウンセリングの歴史

カウンセリングにおいて、大切な歴史的背景を説明していきます。

ただ、専門的な説明に関しては各書物や、専門家にお任せしますので、

ここではどんな流れで、カウンセリングが行われてきたのかということを

お話していこうと思います。

なぜこんなお話をするのかというと、

カウンセリングを学ぶにあたり、歴史を知っておくことや、

どのような流れで各療法が創られて今に至るのかを知っておくことは、

とても大切だからです。
※ここではカウンセリングは(心理療法を含む包括した概念でご説明しています。)

人は歴史から学ぶものですからね。

さて、ではその歴史を本当にさくっとさらっていきましょう。

カウンセリングの歴史は、フロイトから始まった。

カウンセリングの歴史は、オーストリアの精神科医であるS・フロイトから始まったといっても過言ではありません。

フロイトは、精神分析で有名ではありますが、実は最初は催眠療法という療法をしていたのです。

ただ、この催眠療法がクライアントの依存度を強めるのではと懸念し、前額法を用いてカウンセリング行っていました。

この前額法とは、クライアントに寝てもらって、カウンセラーが読んで字のごとく額に手を強く押し付けてはじまります。

その手を強く押し付けたまま、目を閉じてもらい浮かんできたことを言葉にしてもらうというものです。

今のカウンセリングだとちょっと想像できないですよね。

ただ、当時はそんなことも行われていたのです。

 

さて、フロイトは精神科医として当時ヒステリー患者の治療をしました。

ヒステリーとは、神経症の一種です。

精神的な要因により、知覚障害や運動障害、意識障害や、病的なまでの興奮状態などの症状を呈するものです。

フロイトは、人の精神を3つに分けた。

このヒステリー患者の治療を通して、フロイトは人の心には無意識があると考え、人の精神を意識と前意識、無意識の3つに分けたのです。

これが有名な局所論です。

でも、有名だと思っているのは僕だけかもしれません…。(汗

あ、そうそう。

世間一般的に使われている無意識は、フロイトがいう無意識ではなく「前意識」のことを指しているんですよ。

どういうことかというと、よく無意識の説明として車の運転の例がでると思います。

最初は意識して、ハンドルをどのくらい切れば、どれくらい曲がるのか、

ブレーキをどれくらい踏めばどう減速していくのかなどを意識して行いますが、

それが慣れてくると自然と意識しないで【無意識】で出来るようになりますよね。

だから、人は無意識があって無意識で行っていることが多いんですよ。

 

なんて説明を聞いたことがある方もいるかと思いますが、厳密にいうとそれは間違いです。

なぜなら、どのくらい踏めばいいのかやどれくらいハンドルを切ったらいいのかは、

意識すれば思い出すことが出来るからです。

「さっきハンドルを切ったけれど、それはカーブがこれくらい急だったから、これくらい切ったんだよ。」といったように。

意識すれば思い出せることは、フロイトの言葉では前意識というのです。

 

では、フロイトがいう無意識は何を指すのかというと、

意識しようとしても意識できない領域のことで、

精神的に”抑圧”されており、コンプレックスがある領域です。

このコンプレックスは説明すると長くなりますので、

ちょっと省かせて頂きます。

精神には3つの心理的な装置があると仮定した。

その後、フロイトは局所論をさらに発展させて、人の精神(心)には3つの心理的な装置があると仮定しました。

この3つの装置は、聞いたことがあるかもしれませんが、イド・自我・超自我の3つです。

この3つの装置がバランスを取り、僕たちのパーソナリティー(人格)を形成していると考えたのです。

ちなみにこの理論を構造論といいます。

 

ちなみに、フロイトの弟子であったエリック・バーンは、

交流分析という理論をその後体系化して、

人の精神状態をParent (親)、Adalt(大人)、Child(子供)の3つに大きく分けましたが、

これはイドが「親=超自我」、「自我=大人」、「子供=イド」の3つに対応していると言えます。

 

さて、ちょっと話が逸れましたので、話を戻しましょう。

この構造論を考えたフロイトは、さらにこう考えたのです。

人は受け入れがたい不快な感情や、心理的な葛藤や観念があった時、

それが意識に上がらないようにする為の働きが無意識的にとられると。

投影で有名な防衛機制

その無意識的な働きをフロイトは、防衛機制と呼びました。

これは心理的装置の一つの自我の機能の一つです。

イドと呼ばれる根源的欲求と、

親から取り入れたこうあるべきという価値観や考えなど理性的な部分である超自我、

それのバランスを取るのが自我です。

イドは根源的な欲求であり衝動ですから、

それをそのまま出すとおかしくなってしまいますから、

理性的な部分である超自我がそれを抑えるわけです。

 

ただ抑えつけすぎると、それもまたアンバランスですから、

その調整を自我がするという構図です。

 

さて、防衛機制という言葉が出てきましたが、

この防衛機制は実は皆さんになじみ深いものがあります。

きっと聞いたことがあると思います。

「投影」と「抑圧」って聞いたことがありませんか?

これは、防衛機制の一つなのです。

 

投影は、受け入れがたい気持ちがあった時に、

それを自分ではなく、相手が持っているものとする働きです。

自分の心を映写機のように相手に映しだす事で、

自分ではなくさも相手が持っているかのように感じる働きです。

 

「抑圧」は、受け入れられない感情や考えと直面した時に、

それを意識しないように無意識に押し込める働きです。

 

一度や二度は聞いたことがあるのではと思います。

 

さて、フロイトはこの抑圧により押し込められた感情や観念(考え)などが、

無意識に追いやられ、それが形を変えて神経症として身体症状に表れると考えたわけです。

 

だから無意識へと追いやられたその感情や観念を意識化することが出来れば、

その症状が改善するのではと考えたわけです。

 

そこでフロイトは自由連想法や夢分析などを行って意識化を図ったのです。

自由連想法とは、ある言葉やイメージがきっかけとなり、次々に浮かんでくるものを

そのまま言葉にしていき、分析していくというものです。

また、フロイトの夢分析は夢の内容を分析することによってその人の本当の欲求を見出そうとするものです。

ユングとフロイトの関係。

さてこのフロイトは夢に注意を向けて、分析をしていましたが、

この夢に注目した人物がもう一人いました。

その人物は、カール・ユングです。

 

この「夢」がフロイトとユングの接点となり、

二人は共に活動をすることとなったのです。
※うろ覚えですが、確かフロイトが書いた夢に関する本をユングが読み、コンタクトをした経緯があったはずです…。ただ定かではないので興味がある方はご自分で調べてみて下さいね。

 

ただ、この二人は結局たもとを分かつことになるのです。

というのも二人の夢に関する解釈の仕方は異なり、

フロイトの「性」の抑圧などが様々な心理的な症状や、

人の発達に影響を与えるという理論にユングはためらいを抱き、

また、フロイトの精神分析論では統合失調症の症状を説明できないとユングは感じ、

結局別れ、別々の道へと行くことになったのです。

 

その後ユングは、神話の世界に没頭していき、独自の理論を展開していき、

分析心理学を作りました。

 

そこでユングは、フロイトが無意識と呼んだ領域を個人的無意識と呼び、

その個人的無意識のさらに深い領域のことを【集合的無意識】と呼んだのでした。

 

なぜユングが集合的無意識に辿り着いたのかというと、その経緯をたどるとその理由が見えてきます。

 

ユングは、統合失調症の患者と向き合う中で、そのヒントを神話の中に見出したのです。

そして、その神話の世界に没頭していく中で、独自の理論を展開しいったのです。

 

さて、この神話には様々な象徴が表れていますよね。

例えば剣は力の象徴であったり、母は大いなる愛の象徴であったりと。

そして、この神話はこの世界には文化の数と同じくらいの数が存在していますよね。

 

それなのに様々な神話に出てくる母のイメージは一緒であったり、

象徴として描かれているイメージが一緒だったり共通点が実に多いのです。

文化も言葉も違うのに不思議ですよね。

ユングは、こういったところに気づき、興味を持ちそういった世界に没頭していく過程で、

人の心には個人的な無意識ともう一つ、集合的な無意識が存在すると考えたわけです。

 

その集合的無意識がある為、夢の中などに出てくる母や父・老賢者や、

女性や男性といった象徴的なイメージが共通しているのだと。

そして集合的無意識にはそれらを生み出す元型が存在すると考えたわけです。

 

さて、なぜフロイトとユングが辿り着いたところが違うかというと、

フロイトとユングが対象にしていた患者にその違いがあることも、

その要因の一つとして挙げられます。

 

フロイトはヒステリー患者。

ユングは、分裂病患者(現在の統合失調症)を診ていたのです。

その点でも辿り着いたところが違ったと考えられます。

 

ただ、二人とも共通して無意識を想定し、

今の心理学やカウンセリングに多大な影響を与えたのには変わりはありません。

 

あ、そういえば、ユングという名前を知らない方も、

性格診断テストとかをやったことがある人は多いと思います。

そこで外向型とか内向型とかそういったタイプ分けされませんでしたか?

この大元となっているのは、ユングの類型なのです。

 

知らないだけで、今もその影響は色濃く残っているのです。

フロイトとユングの影響

ちょっと長くなりましたので、今日はこの辺りで終わりにいたしますが、

カウンセリングを学ぶ辺りこの二人は避けて通れませんので、

名前だけでも覚えておいてくださいね。

 

フロイトの理論は今でも色々な面で影響を与えいますし、

フロイトから離れていって自らの理論を発展させて方も沢山いますが、

その功績は本当に大きいのです。

 

交流分析も精神分析が大元ですし、

遊戯療法の始まりも、子供に精神分析をするようになったからですし、

ロールシャッハテストも人の無意識を分析するものですが、

これもやはり精神分析の影響が強く残っています。

 

フロイトの理論を発展させたり、反論する形でここでは説明しきれないほどの理論が出来ているのです。

ここではすべて説明しきれないので、フロイトの理論が多く話されていた時に

真っ向からフロイトの理論を否定し、

今のカウンセリングにも大きな影響を与える事となった行動主義の台頭について、

この後はお話を進めていきますね。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。