さくっとわかるカウンセリングの歴史

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さて今回は、フロイトの精神分析を真っ向から否定した行動主義の台頭からお話をしていきます。

行動主義とは、ワトソンという方が唱えた現代の心理学の方法論の一つです。

ワトソンは、フロイトの精神分析や、W・ヴントの要素主義は共に

目に見えないものを扱っており非科学的であると訴えたのです。

 

ま~そりゃそうですよね。

無意識と言われても目に見えないですし、

抑圧と言われても、その根拠をデータで示したり、

明示したり証明が難しですもの。

 

ではでは、ワトソンは何が科学的な心理学であるかと唱えたかというと、

目に見える刺激(五感の刺激)と反応(行動)がいかにして行われ、

どのように結びついていくのか、その方式を探求することが科学的心理学であると謳ったのです。

 

このワトソンがこういった事を言い出す前は、臨床心理学の分野は、

当時精神分析が主流であったのですが、ワトソンがこういったことを言い出したことで、

精神分析を中心としたものではなく、科学的な臨床心理学の確立が目指されるようになったのです。

医療の分野でもエビデンスベースドの治療が基本手ですから、臨床心理学もそれを目指したというわけです。

 

また、余談ですがエビデンスベースドが求められた背景には、ベトナム戦争の影響も大きいのです。

なぜかというと、ベトナム戦争で帰還兵の多くがPTSD(トラウマ)となり、その治療としてエビデンス(証拠)がある方法論が求められたからです。

 

さて、話が少しそれましたがその科学的な臨床心理学の一歩として、

ウォルピやアイゼンクによって創設されたのが「行動療法」です。

行動療法とは?

さて、この行動療法とは何でしょうか?

もの凄い端的に言うと、次のようになります。

「人の行動は、外界からの刺激とその反応の組み合わせになって出来ている。

そこでその刺激と反応の結びつきを研究し、その結びつきを学び直したり、

あらたな結びつきを作ることが出来れば、問題は解決する。」

と考え、心理的な問題解決を目指した理論です。

 

その理論的ベースには、学習理論があります。

学習理論とは、人はどのような時に学んでいくのかとうことを体系的にまとめたものです。

はい、言葉通りですみません。(汗

行動療法を理解するには条件付けを理解する。

この学習理論に大きく寄与したのがパブロフです。

「パブロフの犬」って聞いたことありませんか?

心理学では結構有名な実験のお話です。

 

それはこんな実験です。

犬に餌を与える時に音叉も同時に鳴らして餌を与える。

それを繰り返していくと、犬は最終的に餌を与えなくても、

音叉の音を聞くだけで、反射的に唾液が出るようになったというものです。

余談が多くて恐縮ですが、この実験は結構残酷です…。

犬は固定され、口元に管を付けられ、唾液の量を採取していたのですから…。

心理学では、犬とか猿とか、そういった動物を使って実験をしてきた歴史があるのです。

 

あ、また話が逸れましたね…。

 

では、本筋に戻しましょう。

こういった経緯から、パブロフは二つの刺激を同時に提示することにより、

反応を変容させる方法を見出したのです。

 

これを心理学では「古典的条件付け」といいます。

 

これはよく心理学実験のTVとか、メンタリスト的な番組でもやっていますよね。

嬉しいことがあった直後や同時期に、ある特定の音をならす。

嬉しい出来事(刺激1)、特定の音(刺激2)を同時に提示するのです。

 

すると、嬉しい出来事がなくてもその音を聞くだけで、

自然と嬉しい気分になるといったものです。

 

さて、この古典的条件付けと一緒によく紹介されるのがオペラント条件付けです。

人は刺激によって反応、つまり行動をしますが、行動の多くは刺激によるものばかりではなく、

自発的なものですよね。

 

この自発的な行動をどのように変えていけばいいのか。

そこで考えられたのがオペラント条件付けです。

 

これを説明するには、僕が誰から聞いたか覚えてはいないですが、

あるアメリカの子供のお話が分かり易いかと思います。

 

ある6歳くらいの女の子がトイレに入っていしました。

そこで、トイレをいつもの通りに流すと、

玄関からピンポーンと誰かが訪ねてきました。

 

少女はその時は特に何も疑問に思わずに、

その玄関の人の対応はお母さんがいつものようにやっていました。

 

そして、また次の日トイレにってトイレを流した時、

またピンポーンと同時期に誰かが訪ねてきました。

 

きっと少女は心の中でこう思ったに違いありません。

「まさかこのトイレは、流すと誰かがくる魔法のトイレ…?」と。

 

そして、また次の日少女はトイレに行き、

トイレを流しました。

すると”また”ピンポーン!とくるではありませんか、

そこで少女は確信したわけです。

 

これは魔法のトイレだと!

 

そこで少女は次の日、またトイレにいきトイレを流しました!

流すと同時に玄関へと急ぐと誰も来ません…。

あれ、おかしい…。

「お母さん、トイレを流したのに誰も来ないよ!」と訴えると、

お母さんは困った顔をしていましたとさ。

 

さてこのお話から分かるのは、トイレを流すという自発的な行動を取った時に、
(尿意は刺激に分類されますが、説明の為突っ込まない下さい。汗)

たまたま誰かが訪れてくるという反応が起きましたよね。

 

このように人は自発的にとった行動の結果としてもたらされた反応が、

望ましいものや、望ましくないものであった場合、

それがたまたま数回続くと、またそれが起きるのではないかと、

その行動をするようになります。(望ましくない場合は避ける)

これは自発的な行動がある刺激に条件づけられたことになりますよね。

 

これをオペラント条件付けというのです。

 

こういった条件付けが行動療法のベースとなり、

・系統的脱感作法

・モデリング

・暴露療法

などの様々な技法が作られました。

一つ一つ説明するときりがないので、省かせて頂きます。

行動療法に欠けていた視点。

さて、この行動療法ですが実は一つの視点が抜けていました。

その視点とは、人は同じ刺激を経験したとしても、反応が違うという事です。

単純に刺激と反応の結びつきで人の心を説明しようとすると、

なぜ同じ刺激なのに反応が違うのかが説明できないのです。

 

そこで出来てきたのが認知療法です。

認知療法は、A・T・ベックが有名です。

 

彼は、うつ病は感情の障害と言われた時代にそれは違う、

うつ病には特徴的な認知の歪みがあると発表したのです。

 

その認知の歪みは10個あり、それが顕著にみられることを発見。

その認知の歪みを修正することで、うつ病を改善していこうとしたのです。

 

そう、行動療法に抜けていた視点がこの「認知」だったのです。

豆致知識ですが、この認知療法で有名なもう一人の方は、

A・エリスです。

この方は論理療法を作りました。

 

いずれの認知療法も、流れは似ています。

 

僕たちが一日何万回と自分の頭の中で思考していると言われています。

それは意識していなくてもポンと自動的に湧き上がってきます。

 

この自動的に湧き上がってくる思考を自動思考と呼び、

その自動思考を生み出す信念・価値観をビリーフと呼び、

このビリーフが人の反応(行動)などに大きな影響を与えると考えます。

 

そこで、このブリーフが本当に合理的なのかを紙に書いたりして検証し、

そのビリーフを合理的な信念に書き換えていくことで、行動変容を目指すのです。

 

さて、この認知療法ですが、後に行動療法と組み合わされることとなります。

それが「認知行動療法」です。

皆さん一度は聞いたことがありますよね。

 

そう、認知行動療法とは、行動療法の技法と認知療法の技法を組み合わせたものなのです。

中間まとめ

さて、いかがでしたでしょうか?

また、ちょっと長くなってしまいそうなので次回にまた続きはご説明していきたいと思います。

次回は、カウンセラーが分析をしたりアドバイスをすることが中心だった時代に、

アドバイスをせずに、相手の話を丁寧に聴く事を大切にしたロジャースのお話をしていきますね。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。