不満をずっと聞いていると、
こちらまでイライラしてくることもありますし、
不満を言う人に過度に同調しすぎて、
同じように不満の対象に対して、
「本当に」その対象が悪いように感じてしまう。
そんなこともあります。
イライラしてしまう場合は、
聞き手側が不満を言う人に抵抗がある場合や、
相手の不満の中にある怒りが伝わってきて、
巻き込まれてしまう場合が考えられます。
そしてこのいずれの場合も話を聞いていて、
あまり上手く行きません。
いっぽう過度に同調しすぎてしまう場合も、
相手と同じように不満の対象に対して責めたり、
酷いやつだと評価するようになりますから、
聴き手側からすると、
味方になってくれているし、
よく聞いてくれると感じはしますが、
結局不満はつのるばかりになってしまいます。
そう、いずれの場合でもあまり上手く行きません。
ではどうすればいいんでしょう?
昨日の心理ケアカウンセラー資格認定講座では、
ある不満を抱える方のこんなロールプレイをしました。
実家のお店を継ぎ、
母と一緒にお店を経営する兄と、
実家を出ていき、
東京で働くようになったものの、
精神的な病を患い、
母親から仕送りをしてもらい、
なんとか生活をしていて、
回復へと向かい、今はアルバイトをしている妹。
母とは仲がいいものの、
家の窮屈さえを感じ、
実家を出て以来一回も家に帰らずに、
兄になぜか嫌われているクライアント。
母が具合が悪くなり、家に帰りたいが兄との確執がある、、、。
帰りたいけれど、帰れない。
どうしたらいいんだろうか?
そんな悩みを持つクライアントです。
受講生にはカウンセラー役をやってもらい、
一時間カウンセリングをしてもらいました。
一時間お話を聞いていて、
何が兄との間にあったのか、
丁寧探っていましたが、
どうも何があったわけではないようで、
その理由は本人もわからないようでした。
そこで、受講生は「一緒に」困ってしまいました。
お兄さんは結婚したことも言わないし、
「お前はうちの大変さをわかっていない。」
と怒られる。
仕送りだって兄からお金を貰ったわけじゃないのに。
私だって頑張っているのに。
精神的な病を抱えた時だって…。
大変だったんだよ。
それなのに…。
でもあの時感じたのは、
いつ何が起こるかわからないってこと。
だからもう後悔する生き方はしたくない。
母が具合が悪くなって感じたのは、
やっぱそばにいてあげたいってこと。
でもあの家で一緒に兄夫婦と暮らすのは無理…。
かといって一人で暮らせる経済力も今はない。
母になぜそんなに兄が怒っているのか、
その理由を聞いても出てこない…。
何がいけないんだろう…。
そんなお話を聞いて、
受講生は一緒に困ってしまったのでした。
こういうお話ってよくあると思うんです。
「私」は、よく頑張っているつもりなのに、
何であなたはそうなの?
「私」は悪くないじゃない。
ってそんなお話です。
こういったお話を聞く時も大切になってくるのは、
ペーシングです。
つまり相手の世界観に合わせるということです。
だから、いやいやそれはあなたが
家を継いだ兄の気持ちをわかってない
からじゃないといったことは、
言わずに、本人が感じている大変さや
不満をまずは受け止めるということです。
否定してしまうと、
反感をかいますし、
心を閉ざされてしまいますからね。
受講生もこの点はとても上手にできていました。
不満を受け止め、お母さんや兄に対する気持ちや、
心の中の葛藤をよく受け止めていました。
ただ一点、気づくべき所や、
突っ込むべき所を聞き逃していました。
そこを聞き逃していたので、
結局ずっと不満を聴くだけになり、
どうしましょうと一緒に困ってしまったのです。
それは、こんな言葉でした。
「私が変われば変わるのかな~って。何だか逃げている感じもするんですよね。」
という言葉です。
不満を抱えながらも、
本人のなかで薄々何かを変えなきゃとか、
自分の中の後ろめたさに気づいていたのです。
そこを聞き逃していたのです。
カウンセリングに来るということは、
話をただ聞いてほしいというよりも、
何かを変えたい変えなきゃと思って来る
という方がほとんどです。
だからカウンセラーは、その人の中にある
変わらなきゃいけない理由に気づき、
その気持ちも受けとっていくことが大切です。
そしてひと度出てきたその気持ちに、
楔を打つこと。
これも大切なのです。
例えば今のケースですと、
「そうですね!あなたが変われば変わりますよね。」
とか
「ご自分でそういう気持ちに気づいていたから、今日はお越し頂いたんですね。」
といったように、
相手の口から出てきた変わりたい気持ちに対して、
聞き逃さずに切り込んでいく。
そんなコミュニケーションが受講生には必要だったのでした。
人は不満ばかりを抱えているわけではないのですから。
ただ勿論、不満を受け止めて欲しい、聞いて欲しい時期の方もいますから、
その場合は、
「今日はこのまま聞いているだけでも大丈夫でしょうか?」
と確認をとることもカウンセリングでは大切です。
お金をもらっていますから、聞いているだけでいいのか、
それもと何か乗り越える為に取り組んでいきたいのか、
ニーズを確認することが大切なのです。
昨日は撮ったビデオを振り返り、
受講生にそんなこともお話をしながら、
実践トレーニングを行いました。
1時間のロールプレイを2回やりましたから、
きっと疲れたと思います。(^^;
お疲れ様でした!
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