非言語フィードバック

人の気持ちは非言語に多く表れる。

人の気持ちは、言語内容にも勿論表れてきますが、非言語にも多く表れてきます。

例えば、仕草や姿勢、声のトーンや表情といった所です。

 

こういった言語外の表現を非言語コミュニケーションといいます。

僕たちは言葉と身振り手振り(非言語)で、いろいろなことを説明したり表現したりします。

 

また、ダンスなども一種の非言語コミュニケーションといえそうですね。

言葉を介さずに表情やしぐさなどで、物語を伝えたり、

感情を伝えたりとそれを見ている僕たちに向けて

コミュニケーションをとっていると言えるからです。

 

このように僕たちは言語と非言語でコミュニケーションを行っているのです。

 

そして、傾聴やカウンセリングではこういった非言語コミュニケーションも

とても大切にしているのです。

 

それはなぜかというと、

シンプルに人の気持ちは言葉にも出てきますし、

非言語にも多く出てくるからです。

 

ですから、その両方を大切にして話を聞くのです。

 

しかし、僕たちは話の内容(言葉)を理解することに精一杯でそれに気づかず、

聞き逃してしまうことが多くあるのです。

 

その為、話を聞いているのに「分かってない。」とか、

「ちゃんと聞いていた?」と言われてしまうのです。

 

それは、話の内容は理解してくれたけれど、

伝えたいこと(気持ち)をわかってくれてないでしょ?

という相手からのメッセージであり、

しっかりと気持ちを聞いて受け止めて。

という相手から訴えなのです。

 

今日はそういった相手からメッセージを受け止める為に、

そもそも非言語コミュニケーションとはどんなものなのか?

非言語をコミュニケーションをする意味は?

非言語コミュニケーションのやり方は?

といったところをご説明していきます。

メラビアンの法則

非言語コミュニケーションとは何かをお伝えする前に、

ある有名なアメリカのこみゅんケーション実験をご紹介しますね。

 

アメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンという人が、

話し手が聞き手に与える影響を3つの要素に分けて実験をしたのです。

その要素とは、言語情報・聴覚情報・視覚情報の3つです。

話し手が与える3つの影響

・言語情報

これは説明するまでもないかと思いますが、話し手が話す言葉の内容です。

つまり何を話すかのwhatに相当する部分ですね。

言葉の意味や話の内容がこの言語情報に相当します。

・聴覚情報

声のトーン・テンポ・リズムなどです。

・視覚情報

表情・身振り手振り・姿勢・しぐさ・態度などです。

余談ですが人は、相手の言葉を受け取る時に言語情報以外にも

聴覚情報・視覚情報という非言語(ノンバーバル)も受け取っています。

厳密にいうと相手の感情も体感覚レベルで私たちは受け取っていますから、

体感覚情報も含まれるわけですが、その情報は実験では数値化できない為、

入っていなかったようです。

 

さてさて、その実験で分かったことは、話し手が聞き手に与える影響の配分です。

  • 言語情報(Verbal)…7%
  • 聴覚情報(Vocal)…38%
  • 視覚情報(Visual)…55%

このような結果になったそうです。

つまり、言語情報(話の内容)が7%、非言語(ノンバーバル)が93%という結果です。

え~?話を聞く人はそんなにノンバーバルの影響を強く受けているの?

話の内容聞いていないの?

とあなたは思うかもしれません。

 

勿論そんなことはありません。

 

そもそもこの実験は、言語情報と非言語情報に不一致があった時に、

聞き手はどういった情報から相手が語った内容を判断しているのかを調べたものです。

そういう不一致に遭遇した時に、

聞き手は言葉の内容からではなく非言語情報から多くを判断するということなのです。

どういうことか簡単に例をだして説明してみましょう。

例えば、あなたがAさんに頼まれたことをやっておいたと報告したとしましょう。

そして、その時にAさんが「ありがとう。」と相手があなたに言ったとします。

 

その言い方(ノンバーバル)が、目を見ずに声のトーンが低く、声のトーン小さい。

表情も変わらず、むしろ気にも留めていない様子が見えたとしましょう。

 

こういった時、僕たちは言語情報と非言語情報の不一致を感じます。

 

その際に相手が本当にありがとうと言っているのか

その判断材料となるのは、言語情報よりも非言語情報ですよね。

このように相手の言語情報と非言語情報に不一致があった時に、

僕たちは言語情報によるものではなく、非言語情報の方を僕たちはより重要視しているのです。

 

そう、実は僕たちは気づかぬ内に相手の非言語を聞いているのです。

 

ただ、日常のコミュニケーションにおいては

相手の話の中身(言語情報)を理解しようと必死になって、

非言語情報に目を向ける隙間がないことが多くあります。

 

ですから、相手の微妙な変化に気付くことが出来なかったり、

言葉を額面通り受け止めてしまって上手くいかなくなったり、

「話を聞いているのに」「聞いていない。」と言われることがあるのです。

 

そして相手のお話を聞いていったり、

相手の悩み相談を受ける場面においては、

この非言語を聞くことが大切になってきます。

 

それは、なぜかというと

相手があなたに話をする・相談するということは多くの場合、感情が動いた時だからです。

 

冒頭と重複しますが、その感情をわかってほしくてあなたに相手は話をしており、

その感情は言語だけではなく、非言語にも多く表れている為、

非言語を聞くノンバーバルコミュニケーションがとても大切になるのです。

また、日本人は恥の文化ですから感情をあからさまに表に出さないですし、

気持ちは言わずとも察してほしい・わかってほしい

という気持ちが強いですから、余計に非言語を聞く力が大切なのです。

 

このように非言語コミュニケーションする意味の一つは、

相手の言葉以外の面を聞くことで、

相手のわかってほしい気持ちを聞くことにあるのです。

言語を聞くとは?

さて、非言語にも相手の感情がよく出てきていて、

そういった非言語に出ている気持ちを汲みることが大切だと話をしてきましたが、

実際にはどうやって行けばいいのでしょうか?

 

実は非言語を聞くということは、皆さん自然とやっているのです。

「あれ?今日なんかいつもより元気なさそうな”声”だな?」

「楽しいって言っているけれど、”表情”が曇っているな…。」

こんなように自然と非言語情報をその耳や目で聞いていますよね。

 

こういったように相手が何を語るのかというwhatではなく、

如何に語るのかのhowを聞くことが非言語を聞くことです。

 

こういった非言語を聞く力がついてくると、

相手の色々な気持ちに気づくことが出来ますし、

悩みの場面では心理的な葛藤が非言語に出ることがよくありますし、

言語的な部分と非言語的な部分の一致感をフィードバックすることにより、

力づけになることもありますし、

非言語に気づくということは、あなたの存在に気付いていますよ

というメッセージにもなりますし、

言語同士で知的に相手を理解するのではなく、

相手の非言語(感情)に直接アプローチすることもできるのです。

 

ちょっと抽象的な説明でしたので、一つ一つ簡単ではありますが具体的に説明していきますね。

葛藤に気付くことが出来る。

私たちは様々な心理的な葛藤を抱えています。

会社を辞めたいけれど、辞めたら不安定になる…。

といったものから、

今夜の夕食はカレーにしようか?唐揚げにしようか?

といったシンプルなものまでいろいろな葛藤を日々抱えています。

 

こういった葛藤は、二つの気持ちが互いに引っ張り合い、主張しあっている状態です。

 

悩み相談では、多くの方がこういった心理的な葛藤を抱えています。

ちょっと簡単な例をあげましょう。

「仕事を辞めたいんだけど、今の職場でお世話になったし本当に人に恵まれてはいるんだけど…。だけどね…。」

と相談に来てくれた方がいました。

そういった話をしている時に、

仕事を辞めたいという話をする時に姿勢が右に傾き、

だけど今の職場でお世話になったしという話をする時は姿勢が左側に揺れていました。

 

そしてその揺れ幅が明らかに右に傾いた時の方が大きかったのです。

 

言語的にも明らかに葛藤をしていますが、

非言語的にもその方の心が揺れ動いているのは明らかです。

 

ただ、言語情報の葛藤に加えて非言語の葛藤をプラスすると、

気持ちはどうやら「仕事を辞める方」に傾いているようにも見えます。

 

このように人の気持ちは、言語レベルのみならず非言語レベルにも現れます。

こういった気持ちの変化に気づくことが出来るようになると、

言語情報のみならず非言語情報の双方向から相手を理解することができ、

より相手の気持ちに気付くことが出来るようになるのです。

非言語のフィードバックをすることで、気持ちと交流が出来ることも。

例えば上の例のような場合、こんな非言語のフィードバックをすることができます。

「話を聞いていると、私にはどうもあなたは辞めたい方に気持ちがより強く揺れてるように見えるのですが…。」

といったようにです。

相手はまだやっぱり辞めたいという気持ちを言葉にしていませんが、

こういった非言語のフィードバックをされると相手は自分の内面を探り、

どちらの気持ちが今強いのかを探る瞬間が訪れます。

 

そうするとやっぱりそうだなと感情レベルで再認することもありますし、

心のどこかでそう感じていたとしたら、

よくわかってくれていると相手が感じてくれることもあります。

 

人は頭で考えても心がついてこない為、悩みを抱えます。

 

アイシュタインが言うように「問題は同じ次元では解決できない。」のです。

ですから頭(言語)と頭(言語)でコミュニケーションをとるのではなく、

心(非言語)でコミュニケーションを取ることが大切なのです。

あなたに気付いていますよというメッセージになる。

僕たちは自分の気持ちをすべて言葉で表現できない時があります。

気付いてほしい時でも、なかなか言葉にできない時があります。

そんな時に

「大丈夫?さっき大丈夫って言っていたけれど、背中がなんだか切なそうだったから何かあったんじゃないかって心配になっちゃって。」

とちゃんと自分のことを見てくれて声をかけてくれる人がいたらどうでしょうか?

言葉にはしていないけれど、

その裏にある気持ちに気付いて声をかけてくれるということは、

時にとても心強いものです。

「自分のことをわかってくれる人はいるんだ。」となんとも言えない温かい気持ちになります。

非言語のコミュニケーションには、そういった相手の気持ちの機微に気付いてあげる。

そんな大切な役割もあるのです。

一致感をフィードバックすることで力づけになる。

また、言語情報と非言語情報をフィードバックすることで、力づけになることがあります。

例えば僕がよくやる例でいうと、

「○○をやりたい。」とクライアントが伝えてくれた時に、

その言葉を如何にいうかの非言語に注目します。

 

声のトーンはハキハキしているのか、力強いのか?それとも弱弱しいのか?

姿勢はどうか?目線はどうだろうか?

そういったことから、どれだけ一致感を持ってその言葉を言っているのかを判断し、

「本当にやりたいんですね。目に力がありますね。」とか、

「何か自分の中に一本筋が通ったような感じしますね。」というように、

フィードバックをすることがあります。

 

こういったフィードバックは相手に対する力づけにもなります。

「やっぱり自分はやりたい気持ちが強いんだな。」とか、

「やっぱり自分は○○が好きなんだな。」といったように、

自分の気持ちを改めて自覚する時、よりその気持ちを大切に進もうとするものです。

小まとめ

このように非言語コミュニケーションには、様々な種類がありますが、

どれもそれぞれ大切な力があります。

 

相手の心の葛藤に気付きそれを言葉にしていくことで、

相手が自分の気持ちを吟味できるようにサポートをすること。

 

相手の気持ちの機微に気付いて、相手を大切にすること。

 

相手の気持ちを受け取りそれをフィードバックしていくことで、

頭と頭のコミュニケーションではなく、

直接相手の心(気持ち)とコミュニケーションをすること。

 

そして、こういった言語外のコミュニケーション力がついてくると、

相手の言葉に引っ張られずに相手の気持ちを聞けるようになりまし、

より相手の気持ちに寄り添って話を聞くことが出来ます。

どのようにすれば非言語に気付けるのか。

では、どのようにすれば話し手の非言語に気づくことが出来るのでしょうか?

その一つの答えは、傾聴の醍醐味である五感をフルに活用して話を聞いていくことに隠れています。

 

僕たちが話を聞く時は、話の内容を理解しようとするあまり、

あまりうまく五感を活用して話を聞けていません。

 

例えば、話を聞く時も大体聴覚がメインで視覚に関しては相手の表情にとどまり、

体の感覚はあまり意識に上げずに話を聴いている時が多いのです。

 

ただ、こうなってしまうのもしょうがないことです。

僕たちは相手が話す内容をしっかりと理解するように教育を受けてきて、

コミュニケーションにおいて大切なもう一つの言語である非言語を聞く

という教育を受けてこなかったのですから。

 

そこで大切になってくることは、

上手に目を使い相手の微細な表情の変化やしぐさの強弱、

姿勢の変化などを見れるようになること。

 

上手に耳を使い相手の微妙な声の上がり下がりや、

速さの変化に気づいたり、声の重さや軽さに気づき聞けるようになること。

 

上手に自分の体を使い、相手の気持ちを感じることが出来るようになること。

 

非言語を受け取るにもまずは、「気づく」ことが大切になりますから、

相手に気づけるように五感の感覚を上げていくことが大切です。

 

五感の感覚を上げていくには共感覚といって、

あるご五感情報を別の五感情報に置き換えて理解することが大切ですから、

まずはそれをやってみて下さいね。
※共感覚のトレーニングはこちら。

言語のフィードバックのやり方

さて、ここでは相手に気づいた上で、実際にどのようにフォードバックをしていくのかに関してお伝えしていきます。

フィードバックする時のコツは、「I message 」を使うことです。

イメッセージとは、アサーションと呼ばれる「自分も相手も大切にするコミュニケーション技法の一つ」です。

Iとは、英語の「私」という意味で、メッセージは、そのままの意味で「相手に伝える」という事です。

「こうした方がいいよ/それはこうだよ。」と断定したり、アドバイスをするのではなく、「私(I)は、こう思いました。」と相手に自分の意見や主観的に感じたことを伝えることにより、相手に受け取るか受け取らないかの選択権が得られ、相手も自分も尊重できるコミュニケーション方法です。

フィードバックをする上で、決めつけてしまったりするとお互いに傷ついて

しまうこともありますし、関係が悪くなってしまうこともありますから、

「あくまで”私”はこのように感じた。(思った。)」と伝えることが大切です。

 

そしてもう一つのコツは、気持に関してのフィードバックは、

最初は控えて、”客観的に”見えたり、聞こえたり、感じたりしたことに留めておくことです。

 

例えば、「怒っているように感じるよ。」と伝えた時に、

「いや!怒ってないって!」と余計怒りをかってしまう時もありますからね。

 

ですので、原則的には客観的に見てとれたものの方がいいでしょう。

 

例えばこんなように、

「何だか落ち着かないように見えます。」(視覚)

「声が詰まっているように聞こえます。」(聴覚)

「話を聞いていると、胸が苦しくなるような感じがします。」(体感覚)

といったように、客観的に今目の前の人を見て聴いて、感じたことをフィードバックすると

よりニュートラルにフィードバックができるので、相手も受け取りやすいでしょう。

 

そして、フィードバックをすると相手からも“フィードバック”が返ってきます。

「いや、落ち着かないというよりは、もどかしい感じかな。」とか、

「実は、言いづらいことがあってね…。」とか、

「苦しいというよりも、締め付けられる感じがするんだ。実ね…。」

といったように相手からフィードバックが返ってきますから、

それによって自分が見て取れたことが、どんな気持ちだったのかを理解できて、

「あ~こういう気持ちだったのか。」と相手をより理解することができます。

 

相手からしたら、非言語のフィードバックをもらうことで、

自分の内面に意識が向きやすくなりますから、

自分の気持ちをより吟味でき、自分の気持ちとの対話も進んでいくのです。

 

さて、いかがでしたでしょうか?

文章で書くと非言語のことなので、なかなか伝わりづらかったこともあったかもしれません。

傾聴基礎コース心理ケアカウンセラー資格認定講座では、

実際にこのトレーニングもしていきますので、お気軽にお越しくださいね。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。