僕たちは悩みを相談された時に、
一つ大きな勘違いをしがちです。
その大きな勘違いとは、
「状況や出来事を詳しく把握する必要がある。」
ということです。
悩みを聴くわけですから、
そこに至る状況や出来事そのものを把握して、
情報収集がまずは大切だ!
と思ってしまいがちのです。
すると、多くの場合、
原因を探ったり、
それをした理由を追究したり、
状況を整理しようとしますが、
誤解を恐れずに言えば、
相手が語る言葉そのものを信頼して聞いていると、
多くの場合巻き込まれてしまい、
結局力になれません。
なぜなら、相手が語る言葉は心理的な現実であり、
実際に起きていることと解離があるケースがありますし、
そのまま困っている状況を鵜呑みにした場合に、
「そんなことがあったんだ。そりゃできないよね。」
というように、一緒に困ってしまうこともあるからです。
この前の傾聴基礎コースのトレーニングの場面でも、
同様のことが起きていました。
クライアント役の方が、ちょっとした困りごとを言っていました。
「土日に料理が出来なくて困っている。」
といった内容でした。
そこで、カウンセラー役の人はその困っていることをずっと聞いていったのです。
・「なぜ困っているの?」
・「本当はどうしたいの?」
といったように困っていることを明確にしていく質問をしていました。
状況や理由を明確に聞いていったのです。
そして、そこで繰り広げられていた会話は、
料理が出来なくて困っていること、
本当は○○したいことがあるけれど、
できないことなど、
「出来ない」「困っていること」がメインで、
結局堂々巡りを繰り返していました。
状況は分かった、できない理由もわかった。
だけれど…。どうしたらいいだろう?
とカウンセラー役は困ってしまったのです。
客観的にみてみると、
堂々巡りをしてしまい、
困ってしまっている”理由”は明確でした。
それは、カウンセラー役の方が状況や理由や出来事を整理するので手いっぱいで、
非言語に気づいていていないこと。
本気で「土日にこの人は料理ができなくて困っているんだ。」と思っていることの2つでした。
僕たちは「出来事や状況」を整理しようとするあまり、
目の前の人の気持ちを見逃してしまうことが多くあります。
今回のカウンセラー役の方もそうでした。
整理しようとするあまり、「土日に料理が出来なくて困っている。」と
語る表情に少し笑みがあったこと、声のトーンが明るかったことに気づいていませんでした。
そして、その困っていることを語る時間よりも、
別のテーマの話の方が長く、
そちらの方が表情が明るいことに気づいていませんでした。
相手がもっと訴えたいことは、
語られる言葉よりも非言語に出るのです。
そこを捉えない限り、話にやっぱり巻き込まれてしまうのです。
このケースの場合、最初にその困っていることが語られた時に、
「困っているのに随分と明るそうに聞こえます。」
といったように、その言語と非言語のギャップを指摘することができれば、
話しの流れはきっともっと変わっていたでしょう。
そこに気づく事が出来れば、
本当にこの人は「土日に料理が出来なくて困っているんだ。」とは思わずに、
話を聞く事が出来て、きっと会話の流れが変わっていたでしょう。
僕たちは、話を聞く時についつい出来事や状況や理由を聞いてしまいますが、
それより大切なのは、その語り方です。
如何にその言葉を発するかなのです。
そこに気づくことがとっても大切なのです。
そして、クライアントが語る問題を、
本当に「問題である。」と認識すると、
多くの場合、その問題に巻き込まれてしまって、
結局そこに拘ってしまうが為に上手く聞けなくなってしまうのです。
そうならない為には、
相手の口から語られる悩みは、
「そう本人が悩みとして認識しているもの。」
といった程度に留めて聞いていくことが大切です。