さて、前回の記事(コントラスト①)の続きです。

コントラストをつけるということは、

クライアントの中に同時に存在する、

対のものや同時にある別のものの両方を意識に上げてもらうプロセスでしたね。

 

これをすることで、

クライアントの中にある両面を意識してもらい、

それが気づきにもつながりますし、

心の苦しい面の一方だけではなく、

違う新しい心の面もあるのだと、

そのように意識をしてもらうことや、

その新しい心の面を通して、

新たな生き方を身に付けていく、

学習のプロセスにもなるのでしたね。

 

今日は、ちょっと別の角度から

このコントラストをつけるということについて、

一緒に学んでいこうと思います。

 

学んでいく上では、

僕のあまり上手くいかなかった相談例(脚色したもの)を

用いるとわかりやすいので、

それを見て一緒にコントラストをつけるについて身に付けていきましょう。

 

ある相談を受けた時のことです。

詳しい内容は省きますが、

その際にあるトレーニングをしたのです。

 

その時に、

途中まで上手くいっていて、

その方は、悲しみの奥にあった「心の安らぎ」を感じることが出来ました。

 

ただ、その後ちょっと僕のトレーニングの運びがよくなく、

その安心感をさらに感じてもらおうと、

体の感覚を聞く質問をした所、

「肩のこわばりと、胸に力が入っている感じ」を感じると、

答えてくれたのでした。

 

僕は、その時に、

「良いですね。その感じをそのまま感じてください。」

と伝えた上で、

「その感じが今迄の肩のこわばりと力んだ感じと違うのに気づいていますか?」

といった方向性で、

今までとは変わってきている所へと意識を向けなおす援助をしましたが、

内心は、「ん~。ちょっと上手くいかなかったな。」と反省していました。

 

そこで、スーパーバイズを受けた時にこの時の関わり方を相談したのです。

 

その際に先生は、

「この場面でもコントラストをつけることができます。」

と教えてくれたのでした。

 

どういうことかというと、

「開放感は、開放感で感じていましたし、

その時出てきた肩のこわばりと胸の感じは別の感情ですよね。」

「ですからそういった時は、

「肩のこわばりと胸の感じもありますし、開放感も感じていますね。」

と同時に二つの感情を意識してもらうことが出来ます。」

「そうすることで、

クライアントの一つの気持ちだけを感じる心の癖を押し出すことが出来ます。」

「また、この方は特にポジティブ感情を

体の感覚として特定して感じることが特に大切ですから、

こうやって伝えながら少し頑張って

そのポジティブな感情を感じてもらう練習も大切ですよ。」

と教えてくれたのです。

 

ここで僕は「ハッ」と気づきました。

感情は、そもそも一つじゃないし、

同時に存在しているものであり、

その胸の辺りの力んだ感じだ出た時点で、

トレーニングは上手くいっていないと、

判断してしまいましたが、

そうではなくて、

開放感はいまだに別に存在していて、

その胸の力みもまた同時に存在しているのだと。

 

ついつい一つの気持ちに引っ張られてしまう自分の癖に気づくと共に、

悩みを聞いていると、

やはりそういったメインで出ていたり、

出てくる気持ちに意識が行きがちです。

 

でもそうではなくて、

そもそもが別の気持ちなのだと、

一つづきの気持ちではなく、

個別のものが独立して共存しているのだと、

そのように捉えることが出来れば、

こういった時も怯むことなく、

コントラストをつけながら、

その人の両面を見つめて、

声を掛けることが出来るのだと、

反省したのでした。

 

また、コントラストをつけながら、

1つだけではなく、

新たに感じているその一面を、

心の癖と関連付けて、

感じられるように援助をしていくことも、

とっても大切なのだと、

そのように感じたのでした。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。