カウンセリングをしていると、

頑張っているからこその現状維持が働いてくる。

そんな場面に出くわします。

 

人はコンフォートゾーンというのも持っています。

コンフォートゾーンは、心身ともに安全で心地よさを感じる空間のことです。

 

慣れ親しんだ場所は、多くの場合コンフォートゾーンになりますよね。

それは自分の家や地元などの環境要因にとどまらず、

慣れ親しんだ関係性や仕事や、

慣れ親しんだ自分自身に対してもそうです。

 

人はこういった慣れ親しんだ場所や関係性や自分を脱して、

違う環境へと一歩を踏み出そうとすると、

comfortableの反対である不快を感じます。

 

その不快を感じるが為に、快適な状態へと戻ろうとする働きが出てくるのです。

 

ちなみに現状が快適でなかったとしても、

変化をしてその状況へと向かう不快な感じよりも、

今の方がいくらか快適であるという点でコンフォートゾーンなのです。

 

このように人にはコンフォートゾーンがありますが、

カウンセリングにおいては、

今までやってこなかった方をやっていく、

学びなおしていくということがありますから、

コンフォートゾーンを出ていくことがあるのです。

 

例えば、あまり自己主張が出来ていないが為に、

うつ病へとつながっているケースでは、

ケアをしつつ自己主張が出来るように援助をしたり、

これまで引きこもりがちだった方が、

社会へと出られるように援助をしたりしますが、

こういった援助はご本人にとっては、

今までやってきた方向(慣れ親しんだ環境)から、

離れていくことですからやはり不快を最初は感じるのです。

 

勿論、カウンセリングにおいては

そういった今までやったことがなかったことに対して、

保証や一般化をしながらサポートをしていきますし、

その喜びを味わえるように援助をしていきます。

 

ただ、コンフォートゾーンから出る時、

やはり不快な感じがしたり、

元の居場所に戻りたいという現状維持の力が働くのです。

 

こういった状態になると人は、

「やっぱり怖いんだ。」

「まだ早かったんだ。」

「やっぱりダメなんだ。」

とマイナスな意味づけをしてしまうことが多いですが、

実はその逆なのです。

 

何が逆かというと、非常にいい傾向なのです。

決してマイナスな反応ではなく、

むしろ頑張ってきたからこそ当然の反応と言えるのです。

 

つまり、「頑張っているからこそ一時的に戻りたい気持ちが強くなっている。」のであり、

頑張っているからこそ進んだ時に台無しになったらどうしようと怖くなりますし、

頑張っているからこそ抵抗感が強く出てくるのです。

 

それはひとえに「本当に行ける?大丈夫?」と

心が心配してくれる状態とも言えますし、

自分が頑張ってきた証と捉えることもできるのです。

 

僕たち援助側が持っておくべき視点は、

こういった目の前の出来事を否定的に受け止めるのではなく、

肯定的に受け止めることが出来るような枠組みを獲得したり、

自らの思いやりで相手を見つめることなのではと最近は感じるのでした。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。