「そうせざるを得なかった理由を考えてみる。」

例えば、「親が嫌い。」という人がいたとします。

でもお話を聞いていると、

親の話が間々出てくるとします。

 

すると、勿論憎い対象として出てくることもありますが、

そこには葛藤があることが伺い知れます。

 

ただ、僕たちは親が嫌いという言葉を聞くと、

そうなのかという風に納得するか、

どうして嫌いなんだろうという嫌いな理由を探すかどちらかです。

 

こういった時に、

このような方向性で考えてみることも援助に役立つことがあります。

 

それは、「~せざるを得なかった理由や気持ち」を考えてみるということです。

 

今回の例で言うと「親を嫌わざるを得なかった理由や気持ち」です。

 

そもそも好きで嫌いになった人はいないはずですし、

そこには何かしら嫌いになった理由ではなくて、

嫌わざるを得なかった理由があるかもしれません。

 

そこに思いを馳せていくということです。

 

例えば、親を嫌わざるを得なかったのは、

好きな気持ちがやはりあるけれど、

期待を何度も裏切られてきて、

もう傷つきたくないからかもしれません。

 

はたまた、親が離婚をして、

母が大変な思いをしてきて、

母がいつも父に苦しめられてきて、

愚痴を言っていたとすると、

母の味方をする為に同じように嫌いにならざるを得なかったのかもしれません。

 

また、親のことを嫌いで嫌だと思っていないと、

自分のこの苦しさの意味を説明できなかったのかもしれません。

 

はたまた、自立する為に必要なプロセスだったのかもしれません。

 

このような観点でいうと、

頑張りたい理由だけではなく、

頑張らざるを得なかった理由。

 

きちんとしていたい理由だけではなく、

そうせざるを得なかった理由。

 

こういった観点で捉えてみると、

今まで見えなかった個別の事情や、

その人の人生がより見えてきます。

 

そしてもう一つ。

 

「~をしたい理由ではなく、~を辞めたくない理由。」

という観点でも相手を捉えてみると、

それも視点が広がります。

 

例えば「頑張りたい理由」を僕たちはよく聞きますが、

「頑張るのを辞めたくない理由」に僕たちは、あまり目を向けません。

 

これは似ているようですが、ちょっと違います。

「頑張りたい理由」というのは、何かを手にしたいという目的志向です。

「頑張るのを辞めたくない理由」は、さけたいことが含まれますので、回避志向です。

 

このように相手のことを捉えてみると、

今までよりもきっと幅を広げて相手を捉えることが出来ますよ。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。