僕たちは気分が浮き沈みしたりすると、
自分の状態が変化しますよね。
例えば、忙しくストレスが溜まってくるとイライラしたりします。
また、うつ病になると悲観的なことばかりが頭をよぎりますし、やる気が起きません。
虚しさという感情が心を支配すると死にたいという気持ちが強くなります。
誰かとの愛情や繋がりを感じると、安心感や勇気が出てきます。
このように僕たちの心は、ある”状態”や”感情”に「思考」や「行動」が引っ張られるようにできているのです。
なぜこのお話を今日しているのかというと、
この視点が対人援助ではとても大切になるからです。
なぜなら僕たちはともすると、
そういう状態や感情を相手そのものだと理解してしまう事があり、
それによって関係性が崩れたり、
相手や自分を誤認してしまうことがあるからです。
ある状態におけるその人と、その人そのもののアイデンティティは別物です。
というのもその状態がその人ではないからです。
あくまでその状態は本来のその人らしさから離れており、
ある種の異常事態なのです。
また、これは感情も同じです。
感情もその人のアイデンティティではなく、
あくまで一部でありますし、
その感情によって悲観的な考えや普段しないような発言をしているだけなのです。
このような見方ができるようになってくると、
相手の感情を捉えた時に、
相手に対して怒りを抱えた人といったような捉え方ではなく、
今は怒りによってそういう考えや行動になっている。
と捉えられるようになってきます。
この点の何がメリットかというと、
感情を相手そのものと捉えないということです。
ともすると僕たちは、相手の感情を相手そのものと認識したり、
その感情により悪い思考や行動が出てきているだけなのに、
感情=その人と捉えて責めたり否定的に捉えたりすることがありますが、
そのように捉えると援助が上手くいかないのですし、
その気持ちの外にあるその人の力強さが見えてきません。
これは「状態」に対しても言えることです。
うつ病という状態が悪い思考を生み出しているのであり、
その人が本当に考えているのではないし、
そういう人間であるわけではないのです。
過度なストレスがそのような状態や思考を生み出しているのであり、
それがその人の本当の姿ではなく、
一時的に自分らしさを失っているわけですし、
それほどまでに身を粉にして取り組んできたことがあるのです。
このような「状態」と「感情」を切り離して考える。
この視点は、援助側ではなく当事者が認識することも大切です。
というのも当事者自身も、
自分の状態と気持ちを自分そのものだと思っていることがあるからです。
ですからそれを分けるべく、
以下のようなノーマライズを伝えることが大切です。
「そのように考えてしまうのは、あなたのせいではなくて、
人間誰しもそういう状態や気持ちになればそうなるものですよ。」
「うつ病という病がそのように考えさせるのであって、あなたがそういう人間だということではありませんよ。」
「それほど強い悲しみを感じると、人は自ずとそう考えてしまうものです。とはいえ、そんなことが分かったとしてお辛いお気持ちはきっと残るかもしれません。ただ、そういうことも知っておいて欲しいのです。」
といったようにアイデンティティと状態・感情を分ける。
ノーマライズする。
これはとっても大切なのです。
さて、いかがでしたでしょうか?
アイデンティティと状態・感情を切り分ける。
そんなお話をしてきましたが、
これは援助側の相手を捉える一つの視点として有効であり、
援助される側としては、自分と気持ちと状態を切り離し、
過度に自分を責めたり苦しめないようにする為の視点として、
とても大切なのです。
さて、これまでこんな偉そうなことを書いていますが、
僕がそういったことを教わったのはごくごく最近で、
僕もまだまだこれからなのです。(汗)