許容的表現をする時に、

いくつかその表現方法があります。

例えば怒ってはいけないと感じている人には、

「そのように感じているんですね。」

とその気持ちとして伝え返したり、

「怒ってもいいですよ。」

と許可を与える方法や、

「怒こりたい時は怒ってもいいし、怒らなくても大丈夫ですよ。」

といったように、

両方の気持ちを受け入れて許可を出す方法や、

「あなたは怒りたくて、怒りたくないんですね。」

と相反する2つの気持ちを含んで伝え返す等、

許容的な表現は沢山あります。

また、怒ってはいけないと感じている

その背景に思いを馳せて労う事もできます。

例えば、

「大切な人をもう傷つけたくないのですね。」

「その怒りに随分苦い思いをさせられて来たのですね。」

「今までずっと自分の気持ちを我慢されてきたのですね。大変でしたね。」

といったように労うこともできます。

ねぎらいにしても、

共感にしても、

受容にしても、

何処に対して声をかけたいのか、

つまり、どんな気持ちに対して声をかけ、

どのようなことを伝え、

どのように相手に感じてほしいのか、

という意図が大切です。

この意図を意識していないと、

無自覚にコミュニケーションを取り、

とりあえず

ねぎらわなきゃ、

共感しなくちゃ、

受け入れなきゃ、

という風になってしまいます。

勿論、最初はそれでいいのですが、

聞く力をつけたい場合は、

いつかその段階を脱却しなければいけません。

そこを脱却して、

「何の為に」を意識する必要があるのです。

そうすると、

これまで学んだテクニックに対しても、

無自覚に使わなくなります。

例えば、最初に書いた許容的表現で

「怒ってもいいし、怒らなくてもいいですよ。」

という表現は、

怒りたい気持ちもあるし、

ん~でも怒って喧嘩するのも嫌だなと

葛藤を抱えている方には有効でしょうけれど、

本当は怒りたい気持ちが強い場合は、

この表現よりも、

「怒っていいですよ。」

と許可を出す方が効果的かもしれません。

このようにテクニックは、

意図をもって使わないと、

何の意味もなく、

逆効果になってしまうことさえあります。

世の中には色々な聞く技術や、

質問の技術、伝える技術、

変化の技術がありますが、

結局のところ、

「相手がどのような心の癖や気持ちを抱えていて、どのように悩んでいて、どうなっていきたいのか。」

という、

相手のこころテーマとニーズの焦点を絞れていないと、

どんな技術を使っても、

あまり効果がないのです。

大切なのは、技術を身につけ、

相手の今もっとも強く出ている気持ちや思いを受け取り、

そういったメッセージと共に伝えられる

心の癖やテーマにお互いに気づき、

それをお互いに共有して、

共にその改善や解決へと向けて、

共に進んでいく。

その過程で相手のニーズに合った技術を使っていく、

それがもっとも大切なことなのです。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。