少しずつ練習することが、聴くことが上手くなるコツです。

聴くことは体験学習ですから、

知識を学んでどのように耳を傾けたらいいのか、

どのようなことに気をつけたらいいのか、

どのようなことを意識して聴いたらいいのかなどが

少しずつ分かってきたら、今度はそれが実践できるように

チャレンジするタイミングなのです。

 

傾聴基礎コース4日目の最終日では、

このチャレンジをしてもらいました。

チャレンジといっても何も大それたことをするわけではありません。

 

これまで学んだことで苦手な所や、さらに伸ばしたい所など、

自分が取り組みたいテーマを決めて頂き、

それに対して練習をしていくのです。

 

頭で分かると、実際に出来るの間には差がありますから、

実際に体を動かして、頭を動かして話を聞いていく必要があるのです。

 

昨日は僕自身がクライアント役になって、

受講生に聴いてもらって、

その聴き方に対してフィードバックを行いました。

 

フィードバックといっても、

厳しいものではなく、良いところと改善するといい所や、

工夫るすると良いところをお伝えしていくというものです。

 

そんな中でちょっと気になったことがあり、

きっとこれを読んでいる皆さんにも役立ちますので、

シェアしたいなと思います。

 

そのシェアしたいことというのは、

一つ目は、「でも」という言葉を添えて自分の意見を言うと、

相手の意見を否定してしまうのと同じで、

そのでもの先のあなたが伝えたい意見が相手に入ってこないということ。

 

二つ目は、自分が本当に聴きたいことを自覚することです。

 

この二つは、お話を聴いて相手に自分の気持ちや、

言葉を上手に表現する為にとても大切な視点です。

 

この二つの視点を学び、身につけていくことで、

よりあなたの大切な意見を相手に届けることが出来るようになります。

ご興味がある方は、これから説明していきますので、

もう少しお付き合いくださいね。

「でも」は、相手の言葉を「打ち消す」

「そうだよね。あなたの気持ちはわかるよ”でもさ”、こうした方が良いと思うの。」

相手の話しを聞いていて、このような伝え方をすることって

実はとても多いと思うのです。

 

この言葉を伝えた本人としては、

同意した上で自分の意見を伝えたと思っていますが、

相手からするとそれはちょっと違います。

 

相手からしたら「あなたの気持ちはわかる」という言葉が、

結局「でも」とその後の言葉によって、打ち消されてしまい、

否定されてしまったように感じてしまうのです。

 

それは、大抵でもの後は 前文(ここでは「気持ちはわかる」)を

打ち消す内容になっていたり、

その気持ちに沿っていない意見や表現になるからです。

 

例えばあなたの気持ちというその気持ちがこんな気持ちだったとします。

「この商品は、看板商品だったから高く利益率低かったけど、今後は会社の為にもコストカットが大切だから安く提供するべきだと思うんだ。」

という会社の為を思って、

既存の商品のコストを抑え、安くして会社の利益を上げたい。

そんな気持ちだったとします。

 

大体このような時、こういったコミュニケーションになりがちです。

・「あなたの気持ちはわかるよ。コストカットは大切だと私も思う。でも私はね、少し高くてもお客様にとって品質が良いものを提供した方がいいと思うの。コストカットすると品質が下がるでしょ。」

・「あなたの気持ちはわかるよ。でもね値段も価値の一つだから、うちの会社は他と違って値段をずっと敢えて下げてこなかったところもあるのよ。」

といったように、でもの後は前文を打ち消すような言葉や、

前文の意図に沿わない言葉が入ることが多いのです。

 

その為、結果的に「でも」の後文と、

「分かってもらえなかった。」という気持の二つが相手の心に残ります。

 

すると、相手にとったら結局理解してもらえなかったと感じますし、

自分の意見はやっぱり受け止めて欲しいですから、

「でもさ…。」と同じようにでもを使って、

自分の意見を言わずに、

最悪の場合言い合いになってしまったり、

相手が黙り込んでしまったりと、

あまりいい結果にならないことが多いのです。

 

では、どのようにすればいいのでしょうか。

それは、「でも」のかわりに「そして」を使うことです。

文章では「そして」を使うかもしれませんが、

日常会話ではなかなか使わないですよね。

 

それこそ”でも(笑)”、「そして」という言葉はとても有効なのです。

では先ほどの文をでもではなくて、そしてでつなげてみましょう。

・「あなたの気持ちはわかるよ。コストカットは大切だと私も思う。そしてね私はね、少し高くてもお客様にとって品質が良いものを提供した方がいいと思うの。コストカットすると品質が下がるでしょ。」

・「あなたの気持ちはわかるよ。そして値段も価値の一つだから、うちの会社は他と違って値段をずっと敢えて下げてこなかったの所もあるのよ。」

さて、どうでしょうか?

聞こえがちょっと違いませんか?

あなたがこの言葉を言われたとしたら、

「でも」で繋げられたよりも「そして」で繋げられた方が、

なんだか受け取りやすく感じませんか?

 

そしては、前文と後文をうまくつなげる効果がありますし、

否定のニュアンスはありません。

また、「そして」が言いづらい方は「だからこそ」で繋げても大丈夫です。

 

例えば、

「あなたが勇気がある。でも怖がりだよね。」

→「あなたは勇気がある。そして怖がりでもある。」

→「あなたは勇気がある。だからこそ怖がりでもある。」

「あなたのそういう所好きよ。でも、几帳面すぎる所はちょっと嫌だな。」

→「あなたのそういう所好きよ。そして几帳面すぎる所はちょっと嫌だな。」

→「あなたのそういう所好きよ。だからこそ、几帳面すぎる所はちょっと嫌だな。」

「怖い気持ちはわかるよ。でもな怖がってそうやっているよりも、勇気を持って踏み出した方がいいと思うんだ。だってさ…」

→「怖い気持ちはわかるよ。そして怖がってそうやっているよりも、勇気を持って踏み出した方がいいと思うんだ。だってさ…」

→「怖い気持ちはわかるよ。だからこそ怖がってそうやっているよりも、勇気を持って踏み出した方がいいと思うんだ。だってさ…」

さていかがでしょう?

「でも」よりも、「そして」で繋げたほうが抵抗なく受け止められますよね。

 

あなたがもし「でも」と言いたくなった時は、

「そして」「だからこそ」で文をつなげてみて下さい。

 

「でも」で伝えるよりも、「そして」「だからこそ」で繋げたほうが

大切なあなたの意見や言葉が相手に響くのです。

自分が本当に聴きたいことを自覚する。

さて、「二つ目はこの自分が本当に聴きたいことを自覚する」です。

これは昨日の講座中の一コマです。

僕がロールプレイで、ギャンブルにはまり、

そこから抜け出せなくなってしまった方の役をやりました。

 

その時に、以前に止めたけれどやってしまった。

やっぱりやってみて楽しいなって感じてしまったという話しを

少し笑顔で声のトーンを意図的に上げて話をしたのです。

 

その際受講生はそういった僕の反応に対して、

「楽しかったですか?」と質問してくれたので、

その質問に対して「いやぁ、正直…。楽しかったですね…。」

と答えたのですが…。

 

後々この質問の”意図”を確認すると、

「楽しかったですか?」と聞く事で、

「本当に止める気があるのか」ということを確認したかった

という返答がありました。

 

しかし、この「楽しかったですか?」という質問には、

その「本当に止める気があるのか」という意図は入っていませから、

その意図は伝わっていません。

 

さらに「本当に止める気があるのか」と確認し、

相手がそれに対して答えてくれることによって何を期待していたのか?

と聞いてみると、

「協力したいがカウンセリングは、クライアントさんの意志がないといくらカウンセラーが頑張ってもうまくいかないので、意志があれば希望があるな思い進めましたし、意志がなければ厳しいかなと判断したかった。」

という言葉が返ってきました。

これも先ほどと同じで、こういった本当は意図があったにも関わらず、

言葉に出て来ていたのは「楽しかったですか?」というものです。

 

これでは、せっかくのその意図も確認が出来ず、

何度も違った方向性で質問をしたり、

コミュニケーションを繰り返す必要が出てきてしまい、

相手にも負担を掛けてしまいます。

 

そうならない為には、

質問する前に「何を自分は相手に本当に聴きたいのか?」

これを自覚し、その意図が伝わるように質問をすることが大切なのです。

 

先の例でいうと、「楽しかったですか?」ではなく、

「本当に止める気がありますか?」と直接聞いた方が伝わりますよね。

勿論、そのタイミングは見計らう必要はありますし、

この質問は受け手に取ったら、責められている印象もありますから、

そこの表現は工夫する必要があります。

 

例えば、意志の確認をして今後の展開を変えたいという意図を含めて、

「相談しづらい話をお話くださりありがとうございました。」

「カウンセリングでは、聴き手側の私自身も精一杯取り組みますが、一緒に協力して進めていくことが何より大切になります。一緒に協力させて頂きたいからこそ、今どれくらい○○さんの心の中に止めたい気持ちが強いのか教えていただけますか?」

といったように。

このこの言葉がけや質問には、

止めたい気持ちを確認したいという意図や、

止めたい気持ちの強さの確認をして、

一緒に進めていきたい意図を含んでいますよね。

 

このように自分が聞きたいことを自覚し、

その意図を含めて言葉にすることで、

誤解のないコミュニケーションがよりできるようになるのです。

 

日常生活では、僕たちは自分が何を意図しているのか、

何を本当には聴きたいのか、何を本当は伝えたいのか

それらを自覚する機会はあまりせんから、

意図と言われても「?」となりかもしれませんが、

シンプルにいうとこういうことです。

 

その言葉を掛けることで何を本当は伝えたいのか?

その質問をすることで、何を本当は聴きたいのか?

 

言葉がけや質問をする時に、

この二つの点を意識してするようにすると、

言葉がけの言葉の種類も、

質問力も向上していきます。

 

昨日の傾聴基礎コースでは、

そんなお話もちょっとだけさせて頂きました。

 

時期は、来年1月5日からです。

どうぞお越しくださいね!

 

詳しくはこちら

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。