傾聴とは、カール・ロジャースが提唱した
クライアント中心療法の技法のひとつです。
一番最初は、カール・ロジャースは、
指示的療法(こうしたほうがいいというアドバイス等)が多い中で、
人には良くなる力をうちに秘めているのだ。
とし、その内在する力を開花させるために、
カウンセラーとクライアントの関係性を重視しました。
カウンセリングとは、
2者間におけるやり取りを通じて、
の内在する力を開花させることである。
そうすることができれば、人は自然と自己実現へと向かう。
と、そう考えたのでした。
その為、指示して「こうしろ、ああしろ」というのではなく、
指示をせずに、聞いたことを繰り返したり、共感的に理解したり、
受容したり、気持を伝え返す事で、自己との対話が進み、
その”良くなる力”が芽を開き、人の悩みは解決していく
と、そうか考えたため非指示的療法を提唱したのです。
傾聴のみが独り歩きし、誤解が生じる。
ただ、提唱したのはいいのですが、世間で誤解が広がりました。
それは、傾聴技法だけが独り歩きをしてしまい、
結果的に、オウム返しや気持ちを伝え返す(感情反射)、
明確化などの傾聴の技法だけが広まってしまいました。
その為、ロジャースは、非指示的療法から
クライアント中心療法を打ち出したのです。
技法ではなく、人が中心とすることが大切だと。
つまり、クライアントを中心とすること。
そして、技法ではなく、
カウンセラーとクライアントの関係性が
とても大切であること。
その関係性があって、初めて、
クライアントの良くなる力は開花する。
従って、技法だけでは意味がないとしたわけです。
カウンセラーに必要な3つの条件とは?
ロジャースはこのときに初めてカウンセリングに、
”カウンセラーの態度”も治療に必要であると、
打ち出したのです。
そして、ロジャースは
カウンセラーに必要にして十分な条件として、
次の3つを提唱しました。
1:カウンセラーが自己一致状態にある。
2:無条件の肯定的配慮の念
3:共感的理解
1:自己一致
カウンセラーが自分のことをどう思っているか
という自己イメージと、
実際に現実生活で経験する”体験”
との間にギャップがなく一致していることです。
どういうことかというと、
自分は優しい人間だという自己イメージがあるとします。
しかし、実際には優しくできていない。
叱ってしまったという現実があると、
「私は優しい人間」(自己イメージ)
「叱ってしまった。」(体験)
と間にギャップが起きてしまって、
自己不一致を起こします。
優しいはずなのに…。といったように。
そういう状態ではなく、
優しい人間であるという自己イメージと
実際の行動が同じである時、自己一致状態にある。
と考えます。
カウンセラーはこの自己一致が大切であるというわけです。
2:無条件の肯定的配慮の念
条件付きで認めるのではなく
(テストの点が取れたから素晴らしい)
無条件で相手を受け入れるということです。
(テストの点なんて取れなくても、あなたはそこにいるだけで素晴らしい。)
相手の良い面も悪い面も、
そっくりそのまま含めて受け入れるということです。
このように、無条件に受け入れられることにより、
クライアントは、自己不一致状態にあって、
自分の受け入れられない部分を見つめなおし、
自分自身を受け入れられるようになる。ということです。
例えば、
わがままをいって人を困らせてしまう事があり、
それが自分としては嫌だとします。
すると、今回も困らせてしまったと、
何か自分の意見を言うたびに気にしてしまう。
そんな時に相手から
「そうやって気遣ってくれるところも、
時に、わがままをいってくれるところも
全部あなたじゃない。
正直に言ってくれてありがとう。」
と、そういわれると、
なんだか嬉しいじゃないですか。
そっか、それでもいいんだって。
これが無条件の肯定的配慮です。
3:共感的理解
これは相手の内的な世界の変化を
あたかも自分の事のように、
感じとる、知覚することです。
このように、3つの条件が
カウンセラーとして必要で、
さらに、治療的な変化が起きるには、
プラス3つの条件が必要だとしたのです。
クライアントのパーソナリティが建設的に変化する為に必要な6つの条件
① カウンセラーとクライエントの間、心理的接触がある。
② クライエントが、自己不一致の状態にある。
③ カウンセラーが自己一致状態にある。
④ クライアントの対して無条件の肯定的配慮を念を示している。
⑤ クライアントに対して共感的理解を示す。
⑥ ④と⑤にクライアントが気づいている。
この6つの条件が、
クライアントのパーソナリティ変化に必要で、
この6つの条件が満たされた時に初めて、
人は変容していくと考えたわけです。
そして、この共感的理解を示したり、
無条件の肯定的配慮の念を示す際に、
傾聴の技法が使われることになるわけです。
先ほども述べましたが、
この技法だけでは意味がないのです。
この6つの条件がそろって初めて
人は変化していくと、
ロジャースは考えたわけですから。
この本質のところを理解せずに、
傾聴って、オウム返しでしょ、
ただ聞くだけでしょ?
という理解をしたままだと、
ロジャースが非指示的療法の際に
嘆いていたことと同じことになってしまうんです。
それは、技法だけが独り歩きをしていることです。
傾聴はただ聞くだけではない。
傾聴はただ聞くだけにあらずです。
自分の態度も見つめなおし、
共感的に理解をしていますよ。
無条件にあなたのことを受け入れていますよ。
ということを伝えること
それこそが大切なのです。
したがって、技法だけを身につけても
あまり意味がないのです。
ロジャースは傾聴の技法を使い、
積極的にそれを(共感的理解・無条件の肯定的配慮)
クライアントに示しています。
傾聴は英語に戻すと、Active listeningです。
そう積極的に聞くということなのです。
傾聴は手段であり、目的ではない。
積極的に聞いて、
自分にも取り組み、
共感的に理解し、
相手を受容し、
それを伝える。
そうすることで、相手は共感してもらえた
理解してもらえた。
そう感じた時に初めて、
パーソナリティは変化していく。
傾聴はその為の手段にすぎません。
傾聴を学ぶというと、
そういう技法ばかりがピックアップされがちですが、
それが最大の誤解をうむんだと思います。
傾聴は技術だという誤解で、
オウム返しをするのが目的になっている。
確か技術的な所はありますが、
傾聴をする意味と目的がわかっていない。
そこが誤解の始まりです。
手段が目的になっているのを見ると、
なんだか複雑な気持ちになります。
少しでも誤解がとけることを祈って。