ども!講師の野川です。

僕は以前2年間くらいは引きこもっていました。

その間、ゲームばかり、社会との接点は、

家族と、仮想現実(ゲーム)の世界だけでした。

 

そんな僕が今は講師をするようになりました。

時間はかかりましたが、引きこもりを出て、

7年後のことでした。

引きこもりが、社会に出て、

人様の前で話しています。

なんだか不思議な体験です。
さて、そんな僕がなぜ傾聴をお伝えするようになったのか?

そのあたりをちょっとだけお話をしようと思います。

友人の心の叫びを、大切に聞けなかった経験。

「野川さん、助けて!頭がおかしくなりそう!」

そんなネットの友人のチャットでの一言から、

すべては始まりました。

 

その友人は、同じく引きこもり。

家庭環境が大変な状態で、僕と同じく、

引きこもりを脱出できないでいました。

 

その一言から始まった相談に、

僕はたじろきながらも、一生懸命に励まし、

「学校へは行ったほうがいい。」

「いつまでもそうやっててもしょうがない。」

「気持ちはわかるけど、そんなこと言ってたらしょうがない。」

 

自分のことは棚に上げ、

そんな当たり前の言葉だけしか繰り返せず、

当時の僕はその心の痛みに寄り添えませんでした。

 

しかし、幸か不幸か、その友人は、

その後まもなくして、定時制の学校へと通い始め、

「野川さん、俺学校行き始めたんだ。」

「〇〇という学校で、HPに写真出てるから見て。」

そう嬉しそうに報告してくれました。

 

そのHPには初めて見る彼の姿がありました。

 

その後、そこでその友人は心ない言葉をかけられたり、

嫌な思いをしたことを報告してくれました。

 

その時も、

「そんな馬鹿な奴のことなんて気にするなよ。」

「そんなの相手して疲れてたら馬鹿らしいじゃん。」

なんてことを言って励ましていました。

「それにしても、もうこの世界に(ネット)いつまでもいちゃダメだよ。」

とまた、自分のことを棚に上げて、

アドバイスばかりしていました。

 

その後、メルアドを交換しましたが、

その数ヶ月後連絡がなくなり、

連絡が取れなくなりました。

 

今、その友人が何をしているのかわかりません。

 

ずっと、当時はその時のことを後悔するとともに、

人の人生と関わることの難しさ、

人の人生に寄り添うことの難しさを感じ、

自分の無力さを嘆いていました。

 

あの時にもっと人生経験を積んでいたら、

もっと、人と心との関わり方を知っていたら。

人のことを励ましたり、勇気づける仕事がしたかったのに。

 

それができず、そんな経験もなかった僕は、

次相談されたら、もっと上手く相談に乗れるように、

しっかりと、その人の「人生」と関われるように。

そんなようになりたいと思いました。

 

これが僕がカウンセリングを学ぶキッカケであり、

話を聴くという傾聴を今お伝えしている理由の一つです。

聴いてもらうことで、気持ち癒された体験

そして、もう一つは、引きこもりを脱出しようとした時に、

出会ったキャリアカウンセラーにじっくりと話を聞いもらった体験が影響しています。

引きこもりを脱出しようとし、派遣会社に面接にいったあの日。

電車に乗るのもおっくうで、引きこもってた時のことを聞かれたら、どうしよう!

そんな思いを抱えて、どうせ受かるわけないよな、、、。

そんな思いを抱えて、派遣会社のドアをたたき、

まずは面談という時に、40代前半の男性のキャリアカウンセラーの方が、

僕の担当となり、やっぱり聞かれるわけです。

「この期間は何をしていましたか?」
その一言に、胸がぐっとつまり、痛くなりました。

「アルバイトしていました。」

簡単なその一言すら出ずに、

結局「実は、言いづらいんですが引きこもっていまして、、、。」

そんな話を始めていました。
すると、その方は、動じずにただじっと聞いてくれていました。

そると今までの抑えていた気持ちや誰にも言えなかったことが、

次から次へと口から出てきて、止まらなくなり、

気づいたら泣きながら話していました。

 

その間、ただじっとその方は話を聞いてくれました。

それはダメだよと、批判することもなく、

ただ、じっと目を見て話を聞いてくれました。

 

ただ、ただ目の前の相手に集中して話を聞いてもらうと、

自分の気持ちの深いところに届き、自分の抑えていた気持ちや、

頑張ってきた気持ちなど、いろんな気持ちに気づき、

癒しが起きます。

 

まさに、その時はそんな体験でした。

その時です。

「こんな人みたいに悩んでいる方の役に立ちたい。」って思ったのは。

「でも、その方のようにはいきなりなれない」と思ったことと、

”仕事”ではなくて、”一人の人”として、同じように苦しんでいる方の役に立ちたい。

と、そう思ったことがカウンセリングへの気持ちを強くしてくれました。
ただ、ただ聴いてもらうだけ。

それだけの行為が、人を癒す力をもっています。

人は人によって傷ついたり、苦しい思いをしますが、

その傷をいやすのもまた、人だったりするのです。
それを体験したことが僕の財産となり、

そんなたった一度の経験ですが、

誰かに受け止めてもらうことの大切さを身をもって知ることができ、

それが僕の今の礎となっています。

カウンセリングをしていて気づいたこと。

その後、紆余曲折がありましたら、

仕事をしながらカウンセリングを学び始め、

実際、本当に少しずつですが、カウンセリングをするようになりました。

そこで、気づいたことがあります。それは、、、
クライアントが話を本当に聞いてほしい人は、カウンセラーではないということです。
本当は、お母さんであったり、お父さんであったり、友人であったり、仕事仲間であったり、

そういう”身近な人”に聞いてほしいし、認めてほしいんです。
でも、そういう身近な人たちが不器用であったり、

話の聞き方を知らなかったりするために、

僕たちカウンセラーのもとに来る人がいるのです。
そういう人たちの話を聞いていて、

「本当は、友達にこの話を聞いてほしかったんだろうな…」

と、思うことがあります。
友達が悩んで苦しんでいる姿を見て、僕たちは、

「力になりたい!」って思います。
でも、その思いが空回りして、

話を聞いているようで聞けてなかったり、

かえって傷つけてしまったりすることがあります。

 

それは、本人がわるいわけではなくて、

ただ聴くことを通じて援助する。

そのやり方を知らないだけなんだと、そう感じることがありました。

 

もし、苦しんでいる友人の話をきちんと聞いて、

受け止めることができれば、

ただそれだけで、その苦しみは和らいでいくし、

カウンセリングに来るまで、苦しまなくてすむとそう信じています。
何より、誰かの苦しみを何とかしてあげたいという思いやりを、

大切にして、形にしていくことが少しだけでもできれば、

ちょっとは、苦しみが減っていくんじゃないかって思います。
世の中の苦しみではなくて、

あなたの身近な人の苦しみです。

そういう小さなことって大切だと感じます。

 

だから僕は、その苦しみが少しだけでも、

減ることを願って傾聴をお伝えしています。

 

誰かが痛がっていたら、何とかしてあげたい。

って思うのは当然の気持ちです。
その気持ちを聴くという行為で表現していくのも、

また大切なんじゃないかなって思います。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。