昨日は、今年の講義納めでした。
2019年は気づけばあっという間に過ぎ去っていき、
今年も沢山講義をさせて頂きました。
ありがたいことです。
人が途切れずに、
信頼してくれて学びに来てくれること。
それは何よりも有り難く、
まだこの仕事をやらせてもらえるんだなと、
そんな感覚になるのです。
そして何かを教えていくには、
それを教えている講師自身も成長していくことが大切ですし、
受講生から学ぶことも多い一年でした。
具体的に聴くことで、より共感できるようになる。
さてさて、昨日の心理ケアカウンセラー資格認定講座は、
共感・ねぎらい・その伝え方を中心にトレーニングを行いました。
共感は、共感していることを相手に伝えて、
相手がそれを共感してくれていると感じて初めて成立するコミュニケーションです。
ですから「伝える」こと、つまり言葉にすることがとても大切になるのです。
そして、共感をしていく上では相手の気持ちを聞くことが大切ですが、
「今どんな気持ちですか?」と聞くわけにはいきませんよね。
というのも人は気持ちを”聞いて欲しい”んですが、
”直接聞く”のではなく、”察して欲しい”のです。
特に日本人はこの傾向が強いです。
ですから、「今どんな気持ち?」と聞くと、
「こんだけ話しているのにわからないの?」となることがあったり、
「この人に話してもダメだ。」という判断に相手がなってしまうことがあるのです。
ですから、気持ちは直接聞くのではなく、
話しやすい関係や雰囲気づくりなどを心掛けて、
相手が語りやすいように援助をしていくことが大切なのです。
その結果として、自然と語ってもらうことが理想なのです。
※あくまで理想です。
さて、話がちょっと本題とそれてきましたので、そろそろ本題へと入っていきますね。
具体的に聞いていく。
今日の本題は、共感をしていく上で大切な「具体的に聴く技術」です。
気持ちというのは曖昧なものですし、
捉えどころがないものです。
だからこそ、一歩踏み込んでその気持ちを理解しようとする姿勢が大切です。
なぜならあやふやなまま進んでしまうと、
コミュニケーションのズレが生じることもありますし、
その気持ちの奥にある個別性が見えず、
一歩踏み込んだ共感が出来ないからです。
悩みを言葉にする方というのは、
最近よく感じているパターンについて、
簡潔に話すことがとても多いです。
例えば、「仕事が辛いんです。」といったようにです。
これは、最近仕事が辛いことが多くて、
そのように感じているという経験則について話してくれています。
ですから、この段階では「何が辛いのか?」もわかりませんし、
「仕事で辛いというのは、人間関係なのか?業務内容なのか?他の要素なのか?」
といったこともわかりません。
また、もし初対面だとしたら「仕事内容」もわかりませんよね。
ですから、僕たちは例で挙げたような悩みを聞いた時は、
「そっか。仕事の何が辛いの?」といった質問を通して、
「相手の仕事の辛さ」を理解しようとしますよね。
そしてその知ろうという行為を通して、
相手の気持ちをさらに一歩踏み込んで理解しようとします。
そしてそういった行為を通して、
気持ちを分かち合い、共感していくのです。
そう、僕たちは自然と共感する為に必要なことをしているのです。
つまり、相手のことを知ろうという姿勢で、
一歩踏み込んで具体的に聞いていくということをしているのです。
一般の方とカウンセラーの聞き方の違い。
ただ、僕たちは一歩踏み込んで聞く際に、
ある所で止めてしまいます。
それは、「分かった。」と感じたところです。
これは当然ですよね。
それで何がここで言いたいかというと、
一般的な方の「分かった。」と、カウンセラーの「分かった。」は、
ちょっと違うということなのです。
一般的な「分かった。」は、
「そうだよね。自分もそうなったら仕事辛いと感じるよ。」
というような「分かった。」です。
つまり相手の気持ちを自分の体験に当てはめて理解する「分かった。」です。
一方でカウンセラーの「分かった。」は、
もうちょっとニュートラルなのです。
それは、自分の経験をちょっとだけ脇において、
相手がその時に何を感じ、どうしたかったのか、
どういう気持ちだったから、どういう思いだったから辛いと感じたのかを、
一般の的な聞き方より一歩踏み込んで理解しようとします。
ですから、仕事が辛いといった時に思い描こうとするのは、
自分の過去の経験や、自分がそれを体験した場面ではなく、
相手がそれを体験した場面です。
カウンセラーが聞くのは、具体的なやり取りである。
そしてここからも、一般の方とカウンセラーは違いがあります。
一般の方は、あまり具体的な行動・やり取りなどを聞きません。
「なんて言われたの?」とは聞いて、
その相手の発言による辛さを共感はしますが、
その発言を言われた目の前の人がどういう反応をしたのかは、
あまり聞きません。
例えば、
相手から「上司から仕事を早くしろって怒られたんだよね。」と言われたら、
「そんなこと言われたってね~。早く出来たらやってるよね!」
といった共感は示しますが、
その発言を受けて「どう(how)」相手が反応したかはあまり聞きません。
でもカウンセラーは相手の悩みと紐づいている場面は、
より具体的に聞いてきます。
上記の例だと、
「そんなこと言われたってね~。早く出来たらやってるよね!」
という部分までは同じですが、その後にお互いのやり取りがみえるような質問をします。
「それで、そういわれてあなたはどうしたんですか?」
と”より具体的な行動”を聞いていきます。
なぜより具体的な行動を聞いていくかというと、
最初にお話しした通り、相手は経験則を話すことが多いので、
より具体的な目に見えるようなやり取りを聞いていくことで、
具体的に何があったのか?(what)
と
その場面でどう対処したのか?(how)
のwhatとHowを理解しようとするのです。
そうすると、目の前の人の個別性(長所)が見えてくるのです。
例えば上記の場面で、
「早くやっているつもりだったんですけど…。」
と言葉にできていたとしたら自己主張はそんな中でもちゃんと出来る力があるんだなって、
分かりますよね。
「はい。すみません!部長が仰るように早くと私も心掛けているのですが、なんか上手くできずに、ちょっと教えて頂きたいポイントがあるんですが…。」
と答えていたとしたら、相手に上手に合わせる力があり、相手を立てる力もある。
そして、自分の改善点を上手に相手の関係をうまく調整しながら、修正していこうとする力もあるとわかりますよね。
「すみません…。」
と謝って出来ない自分を責めてしまっているんだとしたら、
すぐに謝れる素直さを持っている。
自分の課題に気づく力がある。
その場を反発せずにおさめようとする力があると捉えることもできますよね。
「すみませんとしか言えなくて、いつもわかってくれないんだ…。(悲しそうに語る)」
という反応であれば、今回のことだけではなく、
分かってもらえていないことがたまっているのかなと想像することが出来ます。
今まで何度か伝えられたことがあったのかもしれないが、
もしかしたらわかってもらえなかったことが積み重なっているのかもしれない。
というのも諦めていなければ、怒りが湧いてくるはずですから、
そこで悲しみが湧いてくるというのは、
諦めが強く出ているからです。
こういったことにも思いを馳せると、
そういった状況で、目の前の人はその悲しみにどう対処したんだろう?
という視点へと切り替わります。
ですから「大変でしたね…。そういったことが重なって一人でよく抱えてこられましたね。」
と共感した上で
「お一人でそういった気持ちを持ち続けるのもお辛いことと思います。そういった時そのお気持ちはどうなさっているのでしょうか?例えば、誰かに聞いて貰ったり…。」
といったようにさらに具体的に聞いてきます。
このように聞いていくと、また追加でその気持ちにどのように(how)対処しているのかが見えてきます。
すると、さらにその人の個別性(長所)が見えてきて、
それ故の苦しみが見えてきます。
そうすると、まるで映画をみるように相手の冒頭の「仕事の辛さ」が見えてきます。
それは、具体的に聴くことでやり取りが見えてくるからです。
まるで映画のワンシーンを見るように、
相手とその上司のやり取りを心の中で見ることが出来ます。
するとそのやり取りの中の本人の気持ちがより見えてくるのです。
そしてそうなってくると、
より具体的に相手の気持ちに対して共感が出来るようになってくるのです。
勿論、全ての会話においてこのように具体的に聞いていくことはしません。
悩みと紐づいているような重要な場面で行っていきます。
カウンセリングで大切なのは、何があったかを理解することもそうですが、
それでその時にお互いがどのように反応したかという、
whatとhowを理解することだからです。
昨日はそのようなトレーニングを何度も行いました。
こういったトレーニングは、繰り返しが大切です。
受講生も難しいと言いながら、
後半はかなり上達していました。
さて、もしこういったトレーニングを通して、
より相手の力になりたい方は、是非お越しくださいね。
心理ケアカウンセラー資格認定は、来年(2020ね)4月からです。