相手を褒めるとねぎらうことは、ちょっと違います。
講座をしていても、この区別がつかない方が多くいます。
なんとな~く違うんだろうなということはわかっていても、
言語的に説明できない場合も多くありますよね。
この二つのコミュニケーションは、
悩みを相談された時にもとっても有効に働きますが、
その違いを知り、意図を持って使い分けることがとっても大切です。
なぜなら「褒める」と「ねぎらう」コミュニケーションは、
その違いと意図を知らないと逆効果にもなってしまうこともあるからです。
そこで今日は、褒めるとねぎらうの2つの違いと、
どのように用いると有効なのかという視点で、
この二つのコミュニケーションのお話をしていきますね。
褒める
褒めるというコミュニケーションは、
「よくやったね!すごいじゃん!」
といった言葉にも代表されるように、
相手を称賛することですね。
そして、この相手を称賛する行為は、
何か相手が具体的な行動をした時や、
具体的な結果を出した時に行われることが多いのです。
例えば、
「勇気をだして人前で声を出して自己紹介ができた。」
といった行動が出来た場合は、
「よく話せたね!すごいじゃない!」と、
その行動に対して褒められます。
また、
「テストで90点取った!」
といった結果に対しても、
「よくやったな!90点も取れたのか!」
と褒められます。
小さいころから僕たちはこういった誉め言葉を受けとって育っていますが、
この褒めるという行為は、”条件付き”の場合が多いのです。
テストの点がよかった。
大学に受かった。
試験に合格した。
泳げるようになった。
話せるようになった。
といったようなある行動や結果を出した時に、
褒めるコミュニケーションが行われることが多いのです。
また、能力を身につけた場合も同様です。
英語話せるの?すごいじゃない。
人にうまく自分の気持ちを言葉にできる力があるよね!
といったように、その能力に対しても褒めるコミュニケーションが行われます。
そして大人が子供に褒める言葉をよくかけるように、
褒めるコミュニケーションには少しだけ上から目線であることがあります。
(すべてではないですが。)
では、この褒めるコミュニケーションがどのような時に有効かというと、
相手の行動をより引き出したい時や、
素直に称賛として(上からではなく)述べる時は、とても効果的です。
人は褒められるともっとその行動をしたくなるものですからね。
子供は、親に褒めて欲しくてよく「ママ!見てみて!これできたの!すごいでしょ?」
といいますよね。
そして褒めてもらうことで、あの人が褒めてくれたからもっと喜んでもらおうとか、
褒めてもらうというモチベーションが高まるのです。
また、褒める事により自己効力感が向上し、何事も挑戦してみようという気持ちが増えてきます。
※自己効力感とは、物事に対して「何となくできるとか対処できる」と感じる気持のことです。
その為、相手が望ましい行動をした時にすかさず褒めると、
その行動がより出てきたり、相手のモチベーションアップにもなるので有効なのです。
※より詳しい褒める技術はこちらの記事をご覧くださいね。
ねぎらい
さて一方で、ねぎらいは行動や結果・能力に対してではなく、
その行動・結果を出した背景や思い、
その能力を身につけたその人そのものの労に対して、
労わる言葉を掛けます。
先の例で、
「勇気をだして人前で声を出して自己紹介ができた。」
という場合ですと、ねぎらう場合は、
「とっても勇気がいったよね。その声は震えていたかもしれないけれど、しっかりと私に届いたよ。自分の声を届けられるようになったんだね。」
といったように、言葉に出すという行動の背景にある恐怖
という気持ちを乗り越えたことに対して労い、
その自分を表現できたことを受け止め、
その労をいたわる言葉をかけることになります。
(勿論、他にも沢山言葉は考えられますが一例です。)
このように、ねぎらいは”相手と同じ目線”で声をかけ、
相手の行動や結果、能力の背景やその人そのもの(存在)に対して、
声をかけていきます。
そうすることで、相手は褒められた時とはまた違った受け取り方をします。
きっと皆さんも身近な人から労わられた時があるかと思います。
その時は嬉しい気持ちもありますが、なんだかホッとしたというか、
とても安心したというか、心が緩む感じがしたと思います。
ねぎらってもらうと、このように”気持ちがゆるむ”のです。
僕たちは、自分の気持ちのわだかまりがあって行動できないことがありますから、
そういった時にねぎらいによりその気持ちのわだかまりが解けて、
心が緩んだ分だけ、前を向けるようになることがありますし、
ねぎらいによって自尊心が向上することがあるのです。
※自尊心は自分を大切にする気持ちの事です。
このようにねぎらいは一時的に自尊心が落ちている方や、
感情のわだかまりを抱えている方に対してはとても有効なのです。
ただ、誰に対しても有効なわけではもちろんなく、
気づく能力が高く、行動力もある自己成長タイプの方には、
ねぎらいはあまり有効ではありません。
それはなぜかというと、そういった方は頑張ることは当たり前で、
そこに対して労わったとしてもピンとこない方が多いからです。
このようにねぎらいは、誰に対しても労えばいいわけではなく、
自分の課題や気持ちに気づいているけれど、
感情のわだかまりがありなかなか行動に移せない方や、
自尊心が落ちている方に対しては、
特に有効なコミュニケーションなのです。
より詳しい労いに関しては、
(相手の辛さに思いを馳せ、ねぎらう。)
(相手の心に届くねぎらいの言葉。)などをご覧くださいね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ねぎらいと褒めるコミュニケーションの違いがハッキリしてきましたか?
最後にちょっと表にしてまとめますので、復習がてらご覧くださいね。
褒める | ねぎらう | |
対象 | 行動・能力・結果 | 行動・能力・結果の背景、思い、存在 |
目線 | 少し上から目線 | 同じ目線 |
期待される効果 | 自己効力感UP 行動が増える。 |
自尊感情UP 感情のわだかまり解消 |
さて、ざっとまとめるとこのような違いがあります。
勿論、褒めた結果として、自尊感情が上がることもありますし、
ねぎらった結果として自己効力感が上がることもありますので、
あくまで一つの指針として参考までに見て下さいね。
コミュニケーションにおいて大切になってくることは、
意図をもってコミュニケーションを取る事ですから、
ねぎらいや褒めるコミュニケーションの違いを知り、
より相手の今の気持ちにあったコミュニケーションを心掛けることが何より大切なのですから。
また、実戦形式でねぎらいを学びたい方は、傾聴基礎コースへお越しくださいね。