聞く力を伸ばす

「相手が今どんな気持ちなのかどうやったら理解できますか?」

「ん~経験値だね。」

というお話を受けて、それだとよくわからないということで、

講座を受けに来てくれた方がいました。

 

いや~、真面目な方です。

 

分からないものを分からないままにせずに、

その術を学ぼうとする姿勢ってとっても大切なことだと思うのですよ。

そういった態度であり姿勢は、なかなか身に付けられませんからね。

 

さてさて、話が少しだけ横道にそれましたが、

人が今どんな気持ちなのかを理解する為には、

経験値も勿論大切ですが、

どのように経験を重ねていくのかの方がもっとずっと大切です。

 

経験値の量を増やせば、確かに理解できる量は増えてくるかもしれません。

でも、経験値だけを増やしたとしても、

理解する視点やその術を的確に身に着けていなければ、

あとは個人的なセンスと意識をどれだけ相手に向けれるか、

自分を振り返り自分なりにその理解の仕方の点を修正できるのか

という個人的な要因に大きく依存し、その理解度に差が出てきてしまいます。

 

それでは、結局個人差が大きくなってしまい、

自分なりにやっていく必要がありますし、

それですとやはり限界があります。

 

僕も「誰かを勇気づけられる人になりたい。」と

そのように願い、その思いを心に秘めてから、

どうやったら人を理解できるのだろうか?

どうやったら人は前に進むこととが出来るのだろうか?

心とは何だろうか?

ということをずっと探し、

その答えや、その理解の仕方を求めてきました。

 

その過程で沢山の本を読んで、沢山セミナーに行きましたが、

僕の肌には精神分析のような理解の仕方や、

相手を理論に当てはめて理解をするというやり方が合いませんでした。

 

世の中には、こういうしぐさをしたらこういう心の動きをしています。

というような知見が沢山あります。

 

確かにこのようなパターンに相手を当てはめるやり方は役に立ちます。

でもそれもある程度であり、ある一定の割合で確かにそういうしぐさは、

ある心の動きを表しているのでしょう。

 

でも、それでも、

それに当てはまらない方は沢山います。

 

僕たちが本当に理解したいのは、

目の前の一人の人であり、

きっとあなたの大切な人や、

思いを向けてきたたった一人の人であり、

日々触れ合っていく目の前のユニークな人なのではないでしょうか。

 

僕たちはきっとそういうユニークなたった一人の、

目の前の人を理解したいのではないでしょうか。

 

少なくとも僕が今も追い求めているのは、

そういったユニークな人を理解するその術であり、在り方です。

 

今日は僕がこれまで、学び身に着けてきた視点や、

先生から教えていただいた多くのことを事例を通してお話をしていきます。

「腕を解いて下さい。それは抵抗です。」

相手をどのように理解するかその術を説明する前に僕の話をさせてください。

これはある心理カウンセラーの資格習得コースで、

受講生同士でロールプレイをした時にクライアント役に僕がなった際に言われた一言です。

 

その時僕は、カウンセラー役に質問をされて、

その質問内容に答えるべく考えていて、

腕組みをしながら目線は上に向けて、

なんて答えようか考えていたのです。

 

その刹那いきなりこんなことを言われて、

僕はびっくりするとともに、正直イラっとしました。(笑)

「何なの!?」って。

 

その講座は精神分析よりの講座であったこともあり、

腕組み=抵抗を表していることが多いということを教えていたのです。

 

確かにそういうこともあるけれど、

僕は明らかに「考えて」いたのです。

 

このようにあるしぐさ=このような心の動きというように、

極端にパターンに当てはめて理解することは、

相手を傷つけてしまいます。

 

人は評価や決めつけを嫌いますし、そういったコメントがかえって相手の抵抗心を刺激してしまうのです。

 

さて、ここでの学びは何でしょうか?

それは、パターンに相手を当てはめて理解してはいけない。

ということではなく、文脈が大事であるということです。

 

人を理解するには、ある程度の枠組みが必要ですから、

そういったパターンから相手を理解しようとすることを僕は否定はしません。

 

ただ、そういったパターンを載せている本が説明をしていない部分が、

文脈なのです。

 

どのような文脈でそのしぐさをしたのかが記載されていないことがほとんどです。

というのも、そんなことを書いたらバリエーションが増えすぎて書ききれませんからね。

 

ですから、どのような文脈(シチュエーション・場面)で、

そのしぐさをしたのかを理解することがとても大切なのです。

 

人のしぐさというものは、気持ちと言葉と状況と連動していますから、

それをどういうような気持ちの時に、どういう言葉を言った時に、

相手や環境からどのような働きかけがあった時に、

どういう状況の時にその”しぐさ”をしたのかがとても重要になってくるのです。

 

この視点は、相手を理解する上でもとても役立ちます。

 

どのような状況でそのような気持ちになったのか?

その時にどのような考えをしたのか?

相手からどのような働きかけがあったのか?

 

といったようなことを考えてみると、

相手の行動の理由やその時の気持ちなどを何となく捉えられるようになってきます。

分かっていても抑えられない気持ちがある。

人の気持ちを左右する一つのポイントは期待です。

「こうして欲しい。あ~して欲しい。」といった期待です。

 

挨拶をしてくれなくてイラっとするのも、

「普通挨拶したら返すものでしょ。」という期待があるからです。

 

その期待が裏切られたからこそ、怒りという感情が出てくるのです。

 

傷つけられた時も同様です。

「彼はこういうことを私にしないだろうという期待」が裏切られ、

「なんでそんなことを言うの…。」と悲しみが生まれてくるのです。

この場合は、これくらいは最低限して欲しいといった性質のものではなく、

こういうことは最低限しないで欲しいという、

して欲しくないことをされた期待外れです。

 

このように人の気持ちには期待が大きくかかわってきています。

渋滞でイライラするのも、本当だったら今頃は家に早めについて、

ゆっくりと過ごすはずだったという期待が裏切られたからです。

 

友だちともっと遊ぶはずだったのに、急に友達が帰ると言って

家に帰ってしまった時になんだか寂しい気持ちになるのも、

もっと一緒にいたて楽しく過ごしたかったという期待が裏切られたからです。

 

このように感情が沸く所には期待が見え隠れしています。

 

その為、人を理解する際は、

「本当はどうしたかったのだろう?」

「本当はどうして欲しかったんだろう?」

という期待を理解することが大切です。

人の気持ちは一つではない。

さて、人の気持ちは当然ながら一つではありません。

でも僕たちは人の気持ちをシンプルに捉える傾向があります。

 

あ、この人今起こっているな。

あ、この人今悲しそう。

 

といったように一つの見えやすい気持ちに集中し、

その気持ちの裏に隠れている気持ちや、

その気持ち以外にも出ている気持ちに気づきにくいのです。

 

カウンセリングのスーパーバイズを受けていた時のことです。

「野川さん、この方は今どんな気持ちだと思いますか?」

と先生から質問をされました。

 

その方は、結婚していましたが妻子持ちの方を好きになりました。

向こうには奥様がいるので会いたい気持ちがあっても、

会っても幸せになれないことは分かっている。

けれど好きな気持ちは止められず、

今の旦那さんは自分のことを認めてくれない。

そんな寂しさも抱えていました。

 

先に述べた「どのような気持ちだと思いますか?」という質問は、

その方が好きになった方と会いたいけれど、

倫理的にあってはいけない。

好きになってはいけない。

でも会いたい、この気持ちを抑えるくらいなら

生きている意味すら分からない。

といったような混乱している状態の時でした。

 

僕は「会いたいけれど会えなくて悲しい。だけど、このままじゃいけないとどこかで分かっていて相談に来たと思います。」と言いました。

なので僕は「会ってしまったら自分を傷つけてダメになるとわかっていて、だからこそ何とかしたいと思って相談に来たわけですよね。」と伝えたといいました。

すると先生は

「野川さん。この方は寂しさや、好きな気持ちや、

罪悪感や、旦那さんが受け入れてくれない悲しさや怒り、

様々な気持ちを抱えていますよね。」

「人の気持ちは一つではありません。同時に複数存在しているんですよ。」

と優しく教えてくれました。

 

そう人の気持ちは一つではありません。

目の前に目立って出ている気持ちの裏にも、

沢山の気持ちが存在しています。

 

僕たちはそういった一つ一つの気持ちに気づき、

そういった気持ちたちを受け入れていくことが大切なのです。

気持ちを理解するには話してもらう。

人の気持ちを理解する為に大切なことの一つは、

まずは相手に安心して話してもらうことです。

 

それにはどんな時に人が安心して話ができるのかを考えると近道が見つかります。

 

・人は受け入れられるともっと話したくなります。

・人は否定されるより共感されたり承認されると気持ちが開けてきます。

・話を遮られたり、話題を取られたりすると自分の話が出来なくなり、結果的に話せなくなります。

・人は話の内容だけでなく、その中にある気持ちを聞いて貰えると嬉しくなります。

・ながら聞きではなく、しっかりと目を見て聞いて貰えると、しっかりと理解しようとしてくれているんだなと感じ、話をしてくれます。

・人は自分の考えや価値観を大切にしてくれる人、つまり自分を尊重してくれる人を好みます。ですから相手を尊重していきましょう。

・人は自分に興味や関心を抱いてくれる人がいると、その方にもっと自分のことを話したくなりますから、興味や関心を向けて聴いてみましょう。

こういったように配慮しながら、まずは相手に話をしてもらう。

そしてその語りの中に相手の気持ちを見つけていく。

 

そんな関わり方もあるのです。

 

そしてその為には、ペーシングという話を聞く技術も役立ちますから、

是非参考にしてみてくださいね。

共感力を磨く。

相手に話をしてもらい、それを聞いていく過程で大切になることが、

共感力を育んでいくことです。

 

共感とは読んで字のごとく、

相手の気持ちをじてみるという取り組みです。

 

話の中で表れてくる気持ちを感じとろうとし、

話を聞いていきます。

 

ただ、共感をするにも相手の気持ちに気づくトレーニングや、

相手の人生に思いを馳せる想像力が必要です。

 

相手の気持ちに気づいていくには、

言語的なコミュニケーションと、

非言語的なコミュニケーションの両方が大切になります。

 

特に非言語コミュニケーションの分量は増えていきます。

 

人は言葉だけではなく、

身振り手振り、表情、声のトーン、

姿勢、目線、肩の上がり下がりなど、

色々な面で気持ちを表現していますから、

そういった気持ちに気づくトレーニングも大切です。

そちらに関しては、この「非言語コミュニケーションの意味と効果」記事をご覧くださいね。

 

さて、ではどうやったら具体的に共感力を身に着けることが出来るのかは、

こちらの記事(共感力を高める具体的な3つの方法)をご覧くださいね。

まとめ

さて、いかがでしたでしょうか?

人を理解していくには、理論を人に当てはめるのではなく、

目の前の人を捉えていくトレーニングをしていく。

どのような文脈でその気持ちになったのか?を見極めていく。

 

相手に話をして気持ちを語ってもらい、

その語りの中にある気持ちに気づき、

その気持ちを生み出している期待に気づき、

その気持ちを受け止めて共感を示していく。

 

そういったことがとても大切なのです。

 

さらに具体的に学びたい方は、傾聴講座カウンセリング講座にお越しくださいね。

・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・カウンセリングルームこころ音 カウンセラー
元引きこもりのカウンセラー。現在は講師として、毎週(土)講義を行う。
都内のクリニックでカウンセリングも行っている。