初めて傾聴を学ぶ人の為の傾聴術
傾聴とは、カール・ロジャースというアメリカのカウンセラーの方によって創られた、来談者中心療法という心理療法における応答技法のひとつです。
平たくいうと、こころの耳を傾けて聴くということです。
この教室では、カール・ロジャースさんが教えていた傾聴の概念以外にも多くの聴く技術が入っています。
といいますのも私たちが大切にしていることは、ロジャースさんの傾聴を正しく皆さんにお伝えすることではなく、相手の心に意識を傾けて、丁寧にその方の気持ちを聴くことで、少しでもあなたや、身近な人が笑顔になってくれることだからです。
人の話を心込めて聴く。
目の前の人の話を大切に受け止める。
そんなコミュニケーションが出来れば、人の心はそれだけで軽くなるのものです。
以前に引きこもりを脱出しようとして出会ったキャリアカウンセラーの方に丁寧に聴いてもらった時もそうでした。その優しさや、思いやりを持って聴いてくれた「ただ聴いてくれた」体験は、今でも私の心の宝物です。
あなたにも、あなたに関わる人にもそんな体験をして欲しいなって、大切な人の話を丁寧に聴いて欲しいなって、そんな願いを込めて傾聴をお伝えしています。
傾聴とは?
さて、傾聴とは、カール・ロジャースさんというアメリカのカウンセラーの方によりって創られた来談者中心療法という心理療法における応答技法のひとつです。
傾聴という言葉が独り歩きしていますが、実のところ傾聴とは来談者中心療法における応答技法に立ち位置なのです。
応答技法というとわかりづらいかもしれませんが、話を聞いて、どのように応えていくのか、聞き返していくのかという技法が「傾聴」ということなのです。
この応答技法には、「オウム返し」・「要約」・「感情反射」・「明確化」などのスキルがあります。
この中でも特に有名なのが「オウム返し」です。
オウムのように相手の語尾や単語を繰り返すことで、相手に聞いていますよというメッセージを与えたり、自分の言葉を相手から繰り返されることで、自分の気持ちや考えに気づいたりすことがあります。
オウム返しは、例えばこんなように用いられます。
Aさん「今日さ、会議があってさ、なんだか行きたくないんだよね。」
Bさん「そっか、”行きたくない”んだ。」
といった形です。
ただ、このオウム返しを初め、各種応答技法を練習したとしてもあまり聴く力は伸びませんし、それはロジャースさんの思いとはかけ離れてしまい、当時ロジャースさんが危惧していた事態になってしまいます。
どういうことかというと、ちょっとだけ歴史をさらっていきましょう。
指示的療法から、非指示的療法を打ち出したロジャース。
それは、そもそもロジャースさんの時代は、精神分析をはじめとする指示的な療法、つまりアドバイスが主体だったわけです。
カウンセラーの先生が「こうした方がいいですよ。」といったようにアドバイスするスタイルが主流でした。
ロジャースさんは、そういったアドバイスを主体としたカウンセラー中心の考えではなく、非指示的療法が大切であるということを打ち出したわけです。
つまり、アドバイスをせずに聴くことが大切だと。
それはなぜかというと、人には「自ら良くなる力」があるから、こちらがどうこう言わなくても丁寧に聴けば、自分で問題を解決してくと考えたわけです。
その考えは、当時のカウンセリング業界にとってはちょっと衝撃的な考えでしたから、瞬く間に広まったわけです。
ただ、残念なことに、その時に「傾聴」の技法だけが先行して広まってしまい、非指示的療法の「本質」が蓋をされたまま「傾聴という応答技法」を用いる方が増えてしまいました。
ロジャースさんは、そんな状況を危惧して、名前を来談者(クライアント)中心療法へと変えました。
さて、先ほど技法だけだとロジャースさんの思いと違ってしまうというのは、この部分ですね。
技法ばかりが広まって、「本質」を理解せずに用いてもあまり意味をなさず、それはロジャースさんが望んでいたことではなかったのです。
では、「本質」とは何でしょう?
これを理解する為には、来談者中心療法を理解する必要があります。
ただ、ちょっとだけ長くなりますので、もしそれを理解したいという方は、こちらのページ(「先生傾聴とは何ですか?」)をご覧ください。
傾聴で用いる4つのスキル
さて、ここまで読んで頂いて何となく「傾聴」のことが分かってきたと思います。
では、いよいよ傾聴の技法をご紹介していきます。
➡オウム返し ────────────────────────────────
相手の語尾や単語を繰り返して伝え返すこと。
➡要約 ────────────────────────────────────
相手の話をまとめて伝え返すこと。
➡感情反射 ─────────────────────────────────
相手の感情を伝えた返すこと。
➡明確化 ───────────────────────────────────
相手がまだ言語化できていない気持ちに対して、こちらが先に働きかけることで、言語化でていない気持ちを明らかにするような働きかけのこと。
以上が4つの応答技法です。
来談者中心療法では、この4つのスキルを聴く技法として用いています。
ただ、このお教室ではあまりこのスキルのご紹介やトレーニングはしておらず、他の「心を込めて丁寧に聴くスキル」をお伝えしています。
心を込めて丁寧に聴くスキル。
ロジャースさんの傾聴以外のスキルとして、心を込めて丁寧に聴く為に必要な次のようなスキルやトレーニングを行っています。
➡ペーシング─────────────────────────────────
相手の呼吸や声のトーンやリズム・テンポ、表情や状態(気持ち)などの非言語を合わせることで、相手に安心して話をしてもらうコミュニケーション技法。
➡ ミラーリング────────────────────────────────
相手の姿勢や、仕草などの非言語と自分の非言語を合わせることで、相手の気持ちを感じ取る技法。
➡ 共感覚のトレーニン──────────────────────────────
共感覚とは、ある五感情報を別の情報へと変換して理解することです。
例えば、音お聴いた時に、重い感じがするとか、軽い感じがするというのは、音という聴覚情報を重い軽いの体感覚情報に変換して理解していることになります。
このような別の感覚で理解することを共感覚といい、このトレーニングをしていくと五感の精度があがり相手により気づけるようになっていきます。
➡ 非言語フィードバック───────────────────────────
人がコミュニケーションをする時は、主に言語的コミュニケーションと非言語コミュニケーションに分かれます。
私たちは、話を聞く時に主に言葉の内容(言語)に注意を払う傾向にあり、非言語に関しては二の次になりがちです。
人の気持ちは、言語にも出てきますが、非言語にも出てきますから、非言語に気づきフィードバックをしていくこともとても大切です。
➡ ねぎらい────────────────────────────────────
相手の苦労や、これまで経験してきたことや、その道のりの労をいたわることです。
あなたや私も含め、多くの人は自分が“如何に”大変だったか、辛かったか、苦
しかったかなどを理解して欲しい気持ちを持っています。
“ねぎらい”は、相手が言葉にできないことや、言葉にしていない想いに対して声を掛けることで、「わかってくれた/報われた」などの気持ちが起き、気持ちが緩み自然と前に進む力が出てくることがあります。
信頼関係の築き方
人の話を聴いていく上で大切なことは、相手と信頼関係を築くことが大切です。
信頼関係を心理学では「ラポール」と呼ばれています。
※正確にいうと=ではありませんが、便宜上イコールで表現しています。
そこで、まずは”如何に”信頼関係を築いていけばいいかをご紹介させて頂きます。
相手の話を聴く上で、相手を受け入れるということは大切です。でも、多くの人が受け入れるということは、否定しないで聴くこと。そう思っている方が多いですが、実はそれって違うんです。
目の前の相手の痛みを共に感じようとすること。その先に、共感があります。」
共感は、同情とも、同感とも違います。ここでは、この共感をご説明していきます。
質問力を鍛える
何気なく私たちが繰り返している質問は、実は相手に負担をかける行為であることを気にしている方は少ないのです。
「負担」をかけるということは、どういうことかといいますと、質問されると「自分の内面に入る」為に色々なことを思い出しますし、思い出さないと質問に対して答える事が出来ません。
そして、良い思い出であればいくら思い出しても構いませんが、良くない思い出ですと思い出す度に“再体験”することでもありますから心理的に負担をかけてしまいます。
その為、少しでも負担を少なく質問の精度を上げて、質問力をつけていくことが話を聴く上で大切です。
ここでは、質問力を身につける為の記事をいくつかご紹介していきます。
質問力を向上するには、質問+ケアを。
話を聴く時に必ずするのが、この質問です。何気なく普段してる質問ですが、実は相手に負担をかけています。
これに気づかないと、せっかく質問しても、結局相手を傷つけてしまうこともあります。
質問をしたらしっぱなしになっていませんか?きちんと質問に答えてくれたら”ケア”していますか?
自分の為の質問と相手の為の質問を切り分けてますか?
その質問は誰の為の質問か意識したことは、ありますか?
気づかぬうちに”自分の為”だけに質問を繰り返していませんか?
質問には大きく分けて、3つの種類があります。
この3つの種類を聞分けられると、質問力は向上していきます。